スーパーコロンバイン大虐殺RPG!

スーパーコロンバイン大虐殺RPG!：問題作が問いかけるもの

『スーパーコロンバイン大虐殺RPG!』（Super Columbine Massacre RPG!）は、ダニー・ルドーンが2005年に制作したRPGツクール2000製の同人ゲームです。この作品は、1999年に発生したコロンバイン高校銃乱射事件を題材とし、プレイヤーは事件の犯人であるエリック・ハリスとディラン・クレボルドを操作して、実際の事件を追体験するという衝撃的な内容となっています。

ゲーム内容

ゲームは、16ビット風のレトロなグラフィックで描かれており、プレイヤーはハリスとクレボルドを操作し、コロンバイン高校に侵入、銃撃事件を起こします。戦闘システムは、オートモードとマニュアルモードがあり、敵は「プレッピー・ガール」「用務員」「数学教師」「ジョック系」など、学校関係者が中心です。戦闘では逃げることができず、敵を倒すか、倒されるかの二択を迫られます。ゲームは、事件の時系列に沿って進み、犯人たちの過去の出来事や動機がフラッシュバックで挿入されます。また、彼らのセリフは、著作やホームビデオから引用されています。ゲーム画面には、実際の学校の写真やニュース報道の音声データも使用されており、事件のリアリティを高めています。

プロット

物語は、1999年4月20日の朝、ハリスが母親に起こされるシーンから始まります。ハリスはクレボルドを呼び出し、地下室で爆弾テロについて話し合います。二人は、過去のイジメを思い出しながら、怒りを露わにします。その後、両親にビデオメッセージを残し、武器を持って学校へと向かいます。学校に侵入した二人は、プロパン爆弾を仕掛けますが、爆発せず、人々を殺害することを決意します。学校内を探索しながら殺戮を繰り広げた後、二人は自殺します。その後のモンタージュでは、二人の死体や慰め合う生徒たち、幼少期の写真などが映し出されます。

物語は、地獄へと舞台を移します。クレボルドは地獄で目を覚まし、ゲーム『DOOM』の悪魔たちと戦います。その後、ハリスと再会し、大好きなゲームの世界を楽しみます。さらに、「失われた魂の島」では、ピカチュウやマリオなどのゲームキャラクターに加え、ロバート・オッペンハイマーやジョン・レノンといった著名人と出会います。二人はニーチェに『この人を見よ』を渡し、サタンと戦って祝福を受けるという奇想天外な展開を見せます。

エピローグでは、現実世界に戻り、学校での記者会見が描かれます。ここでは、事件のあらましが語られると共に、銃規制の必要性や、メディアの責任など、政治風刺も含まれます。

開発背景

作者のルドーンは、自身が学生時代にイジメを受けた経験や、コロンバイン高校銃乱射事件への衝撃から、このゲームの制作を思い立ちました。プログラミングの知識がなかったルドーンは、RPGツクール2000を使って、約6ヶ月で本作を完成させました。ゲームは無料で公開されましたが、当初はほとんど知られていませんでした。しかし、ブライアン・クレセンテらによってメディアに取り上げられたことで、知名度が急上昇し、ダウンロード数は数十万に達しました。

ルドーンは、コロンバイン事件を単なる悲劇として捉えるだけでなく、背景にある社会的な問題や、メディアの報道姿勢などを問うことを目指しました。また、ステレオタイプなRPGの要素も批判的に取り入れ、ゲームのメッセージ性を高めました。

評価と影響

本作は、事件や人命を軽視しているとして、多くの批判を受けました。特に、コミカルな表現や地獄のプロットが、ゲームのメッセージ性を曖昧にしていると指摘されました。しかし、一部では、従来のメディアに依らない表現手法を用いた点や、問題提起としての側面が評価されました。テレビゲームと暴力事件の関係性の話題でも取り上げられるようになり、2006年のドーソン・カレッジ銃乱射事件では、本作を原因の一つとして挙げる意見もありました。

本作は、2006年のスラムダンス映画祭で「スラムゲート」と呼ばれる騒動を引き起こし、それまで子供向けと見られていたテレビゲームが持つ芸術性・メッセージ性について一石を投じました。この事件は、ゲーム業界全体に大きな影響を与え、ゲームが単なる娯楽ではなく、社会的なテーマを扱うメディアになり得ることを示しました。

スラムゲート騒動

スラムダンス映画祭のコンペティションに本作が選出されたものの、主催者によって最終選考から除外されたことが、この騒動の始まりです。この決定は、スポンサーの撤退や訴訟リスク、道徳的理由など、様々な要因が絡み合っていましたが、映画祭側は、被害者とその家族への配慮を理由としました。

この決定に対し、多くの開発者が抗議のためにコンテストを辞退し、ゲーム業界に大きな波紋を呼びました。この騒動は、ゲームが持つ芸術性や表現の自由を問う議論を活発化させ、ゲームが社会的な影響力を持つことを改めて認識させました。

その後

本作は、その過激な内容から、賛否両論を巻き起こしましたが、ゲーム業界に大きな影響を与えた作品として、現在でも注目されています。ルドーンは、この作品を通じて、社会の暗部やメディアのあり方などを批判的に捉え、ゲームが単なる娯楽ではなく、社会的なメッセージを伝えることができるメディアであることを示したと言えるでしょう。

また、本作をきっかけに、ゲームと暴力の関連性、ゲームが社会に与える影響、ゲームの表現の自由など、さまざまな議論が活発に行われるようになり、テレビゲームが単なる子供の遊びではないという認識が広まるきっかけとなりました。

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