スーラ (宇宙船)

スーラ (Сура)

スーラは、ウクライナで概念設計が進められていた無人二段式宇宙輸送機の開発計画です。この計画の目的は、軌道へ人工衛星を投入するだけでなく、宇宙空間で行われた実験装置などを回収し、再び地球へ帰還できる革新的な宇宙輸送システムを構築することにありました。

機体は全長17メートル、全幅14メートル、全高6.6メートルと比較的大型で、空虚時重量は約48トンから50トン、最大離陸重量は61.1トンから70.0トンが想定されていました。大きな特徴はその二段式の構造と、それぞれの段が独立した機能を持ちうる点です。

第一段は、単独で弾道飛行輸送機としても運用可能であることが構想されていました。これは将来的に、惑星間ミッションや太陽系内の惑星探査ミッションにおいて、特定の貨物を目標地点へ運搬する役割を担う可能性を示唆しています。

一方、第二段は主に地球周回軌道での運用を担います。軌道上へ貨物を輸送したり、放出したりする機能に加え、既に軌道上にある物資（例えば実験装置）を回収し、これを地球へ持ち帰る能力を持つとされていました。ミッション完了後、機体全体は地球の大気圏へ再突入し、帰還します。再突入時の極度の加熱から機体を保護するため、特殊な熱遮蔽技術が用いられる計画でした。

技術的な観点から見ると、スーラ計画はいくつかの革新的な要素を取り入れていました。その一つがモジュラー設計の採用です。これにより、ミッションの要件に応じて機体の構成を柔軟に変更できる利点が見込まれていました。また、空気力学的な制御翼を持たず、主に液体燃料ロケットエンジンの推力偏向によって飛行を制御するという点もユニークです。大気を利用した飛行プロファイルにより、打ち上げ効率を高める優位性も指摘されています。さらに、貨物を軌道に投入・分離した後に、機体が自ら軌道から離脱する機能を持つことも、軌道上のデブリ化防止に貢献する可能性を秘めています。

スーラ計画が特に重視していたのは、宇宙輸送コストの大幅な削減です。市販されている既存の空気吸い込み式エンジンや液体燃料ロケットエンジンを流用することで、全く新規にエンジンを開発する場合と比較して、開発期間と費用の大幅な圧縮が期待されていました。具体的には、高度300kmの低地球軌道へ300kgのペイロードを打ち上げる場合のコスト目標として、1kgあたり1000ドルという非常に意欲的な数値が掲げられていました。これは、当時の一般的なロケットによる打ち上げ費用と比較して格段に低い水準です。

想定される用途としては、小型の通信衛星を軌道に投入すること、宇宙空間での科学探査や地球観測ミッションへの貢献が挙げられていました。

このスーラ計画は、2010年時点ではまだ概念設計の初期段階にありました。ウクライナは、この計画をトルコとの国際協力プロジェクト「黒海計画」の一環として共同で推進することを構想しており、最大300kg級の小型衛星の軌道投入を共同目標としていました。

スーラ計画は、再利用可能な二段式宇宙輸送機というカテゴリーに属し、宇宙へのアクセスをより安価で柔軟なものにすることを目指した、当時のウクライナにおける野心的な宇宙開発構想の一つと言えます。

関連概念としては、「二段式宇宙輸送機」が挙げられます。

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