ズーム (アルバム)

エレクトリック・ライト・オーケストラ（ELO）が2001年に発表したアルバム『ズーム』（Zoom）は、ファンにとって待望の作品となりました。1986年の『バランス・オブ・パワー』以来、実に15年ぶりのリリースであり、ELOの新たな方向性を示すアルバムとして注目されました。

サウンドの変化

『ズーム』は、以前のELO作品の特徴であったシンセサイザーの多用を抑え、生楽器のサウンドとストリングスのシンプルなアレンジを重視した点が大きな特徴です。この変化は、ジェフ・リンが活動停止後に参加したトラヴェリング・ウィルベリーズの影響を色濃く反映していると言えるでしょう。よりバンド・サウンドに重点を置いた、自然で温かみのある音楽性が展開されています。

制作の背景

アルバムのレコーディングは、ジェフ・リンがほぼ一人で行っており、実質的には彼のソロ作品とも言えます。しかし、かつてのメンバーであるリチャード・タンディがシングル「オールライト」でキーボードを演奏するなど、往年のファンには嬉しいサプライズもありました。さらに、元ビートルズのジョージ・ハリスンとリンゴ・スターがゲスト・ミュージシャンとして参加しており、特にジョージにとっては生前最後のレコーディングの一つとなりました。また、当時のジェフのパートナーであったロージー・ヴェラや、彼の娘ローラ・リンもレコーディングに参加しています。

リリース後の評価と影響

『ズーム』は、ビルボードのインターネット・アルバム・チャートで最高14位を記録しましたが、CDの売り上げは期待されたほど伸びず、予定されていた北アメリカのコンサート・ツアーは中止となりました。しかし、2013年4月にはリマスター盤が発売され、未発表曲がボーナス・トラックとして追加収録されたことで、再び注目を集めました。

収録曲について

アルバムには、「オールライト」「モーメント・イン・パラダイス」といったシングル曲の他、ロージー・ヴェラとの出会いを歌った「ストレンジャー・オン・ア・クワイエット・ストリート」、ジェフの母親について歌った「ア・ロング・タイム・ゴーン」など、様々なテーマの楽曲が収録されています。また、「イン・マイ・オウン・タイム」には、ロージー・ヴェラによるタップダンスの音とスペイン語のヴォーカルが挿入されるなど、ユニークな試みも見られます。

ボーナス・トラック

2001年の日本盤には「ロング・ブラック・ロード」が、2013年のリマスター盤には「ワン・デイ」「ターン・トゥ・ストーン（ライヴ）」「ラッキー・モーテル」がボーナス・トラックとして追加収録されました。これらの楽曲は、アルバム本編とは異なる魅力を放っており、ファンにとっては貴重な音源と言えるでしょう。

『ズーム』は、ELOの音楽的な変化と進化を感じさせる作品であり、ジェフ・リンの才能が改めて認識されるアルバムです。ELOファンはもちろん、幅広い音楽ファンにおすすめできる一枚です。

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