セイヨウヒイラギ

セイヨウヒイラギ（西洋柊）

セイヨウヒイラギ（学名: Ilex aquifolium）は、モチノキ科モチノキ属の常緑小高木です。園芸用として広く栽培され、別名セイヨウヒイラギモチ、またはヒイラギモチとも呼ばれます。英語ではホーリー（Holly）と呼ばれますが、これはモチノキ属全体の総称でもあるため、区別する際にはEuropean hollyやEnglish hollyとも呼ばれます。

分布と生育地

原産地はヨーロッパで、西部・南部、アフリカ北西部、アジア南西部に分布しています。古くから庭園樹として親しまれてきました。

特徴

樹形: 常緑広葉樹で、3mほどの高さになる小高木です。
葉: 葉は互生し、長さ5 - 12cm、幅2 - 6cm。葉の形には変異が多く、全縁のものから鋸歯が多いものまで様々です。若い枝や低い位置の枝では葉の縁に鋭い棘がありますが、古い枝や高い位置の枝では棘が少なくなり、葉先のみが尖るか、または棘がなくなることもあります。
花: 花期は4 - 6月。雌雄異株で、虫媒花です。花は小型で、白い花弁が4枚あります。
果実: 果期は11 - 2月。直径6 - 10mmの核果で、赤く熟し、4個の種子を含みます。晩秋に赤く熟した果実は緑の葉によく映えますが、渋みが非常に強いため、冬の間も鳥の餌になることは少なく、食用には適しません。

利用

セイヨウヒイラギは、庭園樹や生け垣として古くから利用されてきました。硬い葉には棘があり、刈り込みにも強いため、生け垣に適しています。また、園芸品種も豊富で、黄色い実をつけるものや、棘のない葉を持つものなど、様々な品種が育成され、日本でも多く流通しています。ヨーロッパ以外にも、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどで栽培され、野生化している地域もあります。

クリスマスの装飾には、赤い実をつけたセイヨウヒイラギ、またはそれを模した造花が用いられます。冬でも緑を保つことから、古くはドルイド教徒が聖なる木として崇め、それが後にクリスマスの飾りに転じたとされています。

また、セイヨウヒイラギの材は白く堅いため、細工物、特にチェスの駒（白駒）に使われます。

類似種としては、アメリカ原産のアメリカヒイラギモチ（I. opaca）、中国原産のヒイラギモチ（I. cornuta）があり、これらも園芸や装飾に利用されます。日本では特にヒイラギモチがよく用いられます。

文化

ヨーロッパでは、常緑で冬に赤い実をつけることから、キリスト教以前から聖木とされてきました。古代ローマではサトゥルヌスの木とされ、サートゥルナーリア祭で贈り物にセイヨウヒイラギの枝を添えて贈る習慣がありました。これが後にクリスマス装飾の起源になったと言われています。キリスト教では、セイヨウヒイラギはキリストの足元から初めて生えた植物とされ、棘のある葉はキリストの苦難を象徴すると考えられています。

セイヨウヒイラギは魔力を持つとも信じられ、クリスマスの飾りとして、悪魔や妖精から人々を守るために用いられました。ヨーロッパでは数少ない常緑樹の一つであり、冬に緑を保つ植物は神が宿る木と考えられていました。赤い実は血の象徴、白い実は男性の精液のシンボルとされ、二つを合わせて飾ることで新しい生命の誕生を願ったとされています。

セイヨウヒイラギの花言葉は「永遠の輝き」です。常緑であること、そして棘のある葉が邪気を払う力を持つと信じられていたことに由来します。

ヒイラギとの違い

日本に自生するヒイラギは、葉の形がよく似ているため混同されやすいですが、モクセイ科モクセイ属に属する全く別の植物です。ヒイラギは葉が対生し、実が黒紫色に熟します。セイヨウヒイラギとヒイラギは、若木のうちは葉に棘があり、成木になると棘がなくなる点は共通していますが、セイヨウヒイラギは葉が互生するのに対し、ヒイラギは対生することで区別できます。

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