セイント・アンガー

メタリカ『セイント・アンガー』解説

『セイント・アンガー』（St. Anger）は、メタリカが2003年に発表した8枚目のオリジナル・アルバムです。前作から約4年ぶりとなる作品で、その音楽性や制作背景から、発表当時は賛否両論を巻き起こしました。

制作背景

アルバム制作前には、長年バンドを支えてきたベーシスト、ジェイソン・ニューステッドが脱退。これにより、メタリカはベーシスト不在という危機的状況に陥ります。結局、ベースはプロデューサーのボブ・ロックが担当することになりました。しかし、アルバム収録曲のミュージック・ビデオには、後に正式メンバーとなるロバート・トゥルージロが出演しています。

音楽的特徴

本作のサウンドで最も特徴的なのは、ラーズ・ウルリッヒのスネア・ドラムの音色です。スナッピーをオフにした状態で演奏したところ、その独特な響きが気に入られ、レコーディングでもそのまま採用されました。しかし、このサウンドは多くのファンやメディアから批判を浴び、「音が悪い」「金属的な響きが不快」といった意見が噴出しました。ラーズ自身は、これらの批判に対し「心が狭いね」と一蹴しています。

ミュージック・ビデオ

タイトル曲「セイント・アンガー」のミュージック・ビデオは、サン・クエンティン州立刑務所で撮影されました。背景に映っているのはエキストラではなく、本物の囚人たちです。荒々しい楽曲のイメージと、刑務所の雰囲気が見事にマッチした映像作品となっています。

日本での成功

『セイント・アンガー』は、日本のオリコンチャートで1位を獲得。これはメタリカにとって初の快挙であり、現在でも唯一の1位獲得作品となっています。日本では20万枚近いセールスを記録しました。

収録曲

1. フランティック - Frantic (5:50)
2. セイント・アンガー - St. Anger (7:21)
3. サム・カインド・オブ・モンスター - Some Kind of Monster (8:26)
4. ダーティー・ウィンドウ - Dirty Window (5:25)
5. インヴィジブル・キッド - Invisible Kid (8:30)
6. マイ・ワールド - My World (5:46)
7. シュート・ミー・アゲイン - Shoot Me Again (7:10)
8. スウィート・アンバー - Sweet Amber (5:27)
9. ジ・アンネームド・フィーリング - The Unnamed Feeling (7:09)
10. ピュアリファイ - Purify (5:14)
11. オール・ウィズイン・マイ・ハンズ - All Within My Hands (8:48)

プレイヤー

ジェームズ・ヘットフィールド – ボーカル、リズムギター
ラーズ・ウルリッヒ – ドラムス
カーク・ハメット – リードギター
ボブ・ロック – エレクトリックベース

製作

ボブ・ロック – プロデューサー、エンジニア, ミキシング
アントン・コービン – 写真撮影
スコット・カニンガム – production coordination
Mike Gillies – digital engineer, assistant
ポール・ウッド– guitar technician
Wayne Isham – director
Dana Marshall – プロデューサー
Vlado Meller – mastering
Colin Mitchell – camera operator
Paul Owen – monitors
Jean Pellerin – editing, camera operator
Pushead – cover illustration
* Ryan Smith – camera operator

まとめ

『セイント・アンガー』は、メタリカの歴史の中でも異色の作品であり、その評価は分かれています。しかし、メンバーの葛藤や苦悩が色濃く反映された、非常にパーソナルなアルバムであることは間違いありません。メタリカというバンドの深淵を覗き込むことができる、貴重な作品と言えるでしょう。

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