セスジネズミ

セスジネズミ（背筋鼠）について

セスジネズミ（Apodemus agrarius）は、ネズミ目ネズミ科アカネズミ属に分類される小型のネズミの一種です。名前の由来は、その背中にある顕著な黒い筋模様にあります。別名としてセスジアカネズミとも呼ばれています。

形態

セスジネズミは、頭胴長が約130mm、尾長が約120mm程度まで成長します。体色はアカネズミと同様に茶褐色を基調とし、腹部は白色をしています。最大の特徴は、背中の中心を走る一本の黒い筋です。この筋が、他のネズミとの識別点となります。

分布

セスジネズミは、日本国内においては尖閣諸島の魚釣島にのみ生息が確認されています。1977年に初めて生息が確認されましたが、今日までに捕獲された個体数はわずか3頭と、極めて稀な存在です。国外に目を向けると、朝鮮半島から中国全土、台湾、そしてヨーロッパにかけて広く分布しています。

しかし、魚釣島に生息する個体群と台湾産の標本を比較した結果、臼歯のサイズや染色体に差異が見られることが指摘されています。このことは、魚釣島の個体群が、地理的に隔離された結果、独自の進化を遂げた可能性を示唆しています。

魚釣島におけるセスジネズミの生息環境は、人為的に持ち込まれたヤギによる草地の裸地化によって悪化の一途を辿っています。この環境破壊が、セスジネズミの絶滅を加速させる要因となることが懸念されています。

保全状況

セスジネズミは、国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストにおいて、LEAST CONCERN（軽度懸念）に分類されています。しかし、これは広範な分布域を持つ本種の全体的な評価であり、魚釣島に限定される個体群の状況を反映したものではありません。

日本では、環境省レッドリストおよび沖縄県版レッドリストにおいて、絶滅危惧IA類（CR）に指定されており、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いと評価されています。これは、魚釣島における極めて少ない生息数と、環境悪化による生息地の縮小が深刻な影響を与えているためです。

今後の課題

魚釣島におけるセスジネズミの保全のためには、生息状況の継続的なモニタリングと、ヤギによる植生への影響を抑制する対策が不可欠です。また、遺伝的な独自性を持つ可能性が示唆されていることから、保護増殖に向けた詳細な研究も求められます。地域固有の貴重な生物多様性を保全するために、早急な対策が望まれます。

関連項目

* 日本の哺乳類一覧

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