セネガル占領

セネガル占領：七年戦争におけるイギリスの戦略的勝利

セネガル占領は、七年戦争中の1758年、イギリスがフランスの通商を妨害する目的で実行された軍事作戦です。この作戦は、アメリカ人商人トマス・カミングが立案したもので、イギリス海軍の優位性とフランス海軍の弱体化を背景に計画されました。

背景：通商破壊と経済的打撃

カミングは、西アフリカを訪れた経験から、イギリスによるセネガル侵攻の可能性を詳細に検討しました。彼の計画は、ヘンリー・マーシュ大佐率いるイギリス艦隊がセネガル川へ向かい、フランス領サン＝ルイ港を占領するというものでした。カミングは、現地のアフリカ人勢力と同盟を結び、フランスを攻撃するという構想も持っていました。

セネガルのフランス入植地は、戦略的な価値は小さいものの、奴隷貿易の拠点、そして自然ゴムの産地としてフランスにとって重要な存在でした。イギリスの遠征の主な目的は、フランスの貿易を妨害し、経済に打撃を与えることにありました。これは、南部担当国務大臣ウィリアム・ピットの戦略、つまりフランスの資金源を断ち、継戦能力を奪うという戦略にも合致していました。

遠征の展開：サン＝ルイとゴレ島の占領

戦艦2隻と200人の兵士からなるイギリス遠征軍は、1758年初めにプリマスを出発し、テネリフェ島で補給を行った後、4月にアフリカ西海岸に到着しました。カミングは上陸後、現地住民の支持を得て、陸上から要塞を封鎖しました。

マーシュが軍を上陸させると、イギリス軍の突然の攻撃にフランス軍は驚き、5月1日に抵抗なく降伏しました。現地の商人たちはイギリスへの忠誠を誓い、イギリス軍は死者を出すことなく町と要塞を占領しました。

カミングの艦隊は、数十万ポンド相当の戦利品を積んで帰還しました。ピットは、イギリス海軍が容易にサン＝ルイを占領したことに喜び、艦隊が持ち帰った大量の天然ゴムに感銘を受けました。この天然ゴムにより、イギリスの織物業者は原材料を安価に仕入れることが可能になりました。

この遠征の成功を受けて、ピットは同年にさらに2回の遠征を送り出し、それぞれゴレ島とガンビアの占領に成功しました。ピットはさらなる遠征を計画しましたが、ニューカッスル公爵がイギリス本土の防衛が手薄になることを懸念し、反対したため、実現しませんでした。

その後：世界大戦としての七年戦争

ヌーベルフランス、フランス領アンティル、スペイン領東インドへの攻撃、そしてセネガルの占領は、イギリス海軍が世界中を航行できる能力と、ヨーロッパの覇権を争う戦争が世界中に拡大する可能性を示しました。このため、七年戦争を最初の「世界大戦」と見なす歴史家もいます。

西アフリカの植民地の帰属は、1763年のパリ条約の交渉で重要な争点となりました。イギリスはゴレ島の返還には前向きでしたが、セネガル本土の保持を望んでいました。最終的に、イギリスは交渉を有利に進め、サン＝ルイとセネガル本土を保持することに成功しました。

イギリスは、西アフリカでの勢力拡大を目指し、セネガルをその第一歩としました。さらに、チャールズ・オハラ率いるアフリカ部隊を編成し、セネガルを保護しようとしました。

フランスは、この貴重な植民地を失ったことを悔やみ、何度も奪還を試みました。1764年には、フランスがゴレ島からセネガル海岸を攻撃したことが、イギリス内閣を激怒させました。アメリカ独立戦争中の1779年、フランス軍はサン＝ルイに上陸し、占領。1783年のパリ条約でセネガルを奪還しました。しかし、その後もフランスの支配は19世紀中期まで不安定な状態が続きました。

もう一度検索