セバスチャン・ローブ・レーシング

セバスチャン・ローブ・レーシング：多岐にわたる挑戦と輝かしい実績

セバスチャン・ローブ・レーシング(SLR)は、フランスのアルザス地方に拠点を置くモータースポーツチームです。WRCで9度のワールドチャンピオンに輝いたセバスチャン・ローブが設立者として知られていますが、チームの運営は、ローブのビジネスパートナーであるドミニク・ハインツが中心となって行われています。ローブ自身もドライバーとして参戦することもありますが、チーム活動はローブの個人活動とは独立しており、ローブが他のチームで活躍するケースも多いです。

SLRは、その設立以来、ラリー、ラリーレイド、ヒルクライム、ラリークロス、ツーリングカーレース、GTレース、そして耐久レースなど、実に多様なモータースポーツカテゴリーに参戦してきました。その活動範囲の広さは、SLRの柔軟性と高い適応能力を物語っています。

2011年末、ル・マン24時間レースへの参戦を目指して設立されたSLRは、当初、ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ(ELMS)のLMP2クラスや、ポルシェ・カレラカップ・フランス、フランスGT選手権などに参戦しました。特にポルシェ・カレラカップ・フランスでは現在も活動を継続しており、SLRの長い歴史と安定性を象徴する存在となっています。初期の主力ドライバーには、ジャン＝カール・ベルネイやステファン・サラザンといった名ドライバーが名を連ねていました。ローブ自身も、2012年のル・マン24時間レースのテストに参加するなど、チーム活動に深く関わってきました。2013年にはFIA GTシリーズで優勝を収め、シリーズランキング5位という好成績も収めています。

2015年には、[世界ツーリングカー選手権]に参戦。モロッコ人ドライバーのメディ・ベナーニを擁し、シトロエン・C-エリーゼ WTCCでインディペンデントチームとして活躍しました。WTCCトロフィーで年間2位を獲得するなど、高い競争力を示しました。

続く2016年には、ドライバー陣にトム・チルトンとグレゴリー・ドゥムースティエが加わり、3台体制でWTCCに参戦。ベナーニ、チルトンがそれぞれ総合優勝を収めるなど、ワークスチームを脅かす存在となりました。WTCCトロフィーではチームとドライバーの両部門でチャンピオンを獲得する快挙を達成しました。また、この年から、SLRは創設者ローブのルーツであるラリーにも参戦を開始。WRC2やフランス国内ラリーにプジョーで参戦し、新たな挑戦をスタートさせました。

2017年はドゥムースティエに代わりジョン・フィリッピが加入。ワークスチームの撤退後も、高い競争力を維持し、チルトンとベナーニが総合優勝3回ずつを達成。チルトンは年間ランキング3位に入るなど、圧倒的な強さをみせつけました。WTCCがWTCRへと移行した2018年も参戦を継続。ドライバーにはロブ・ハフとベナーニを起用し、複数回の優勝を収めました。同年には[世界ラリークロス選手権]にも参戦。独自のプジョー208RXスーパーカーを開発し、ドゥムースティエをドライバーとして送り込みましたが、年間ランキング最下位に終わりました。

2019年には、電気自動車による氷上レースであるアンドロスe-トロフィーでチームとドライバーの両部門でチャンピオンを獲得。また、この年から若いラリードライバーの育成プログラムを開始し、国内の若手育成レースに参戦するなど、次世代の育成にも注力し始めました。2020年はフォルクスワーゲンの電動化戦略に伴いWTCRへの参戦を見送りましたが、2021年にはTCRヨーロッパシリーズに参戦し、チームチャンピオンを獲得。地元のラリーにも積極的に参戦するなど、活動の幅を広げ続けています。2022年にはTCRヨーロッパシリーズにジョン・フィリッピのみで参戦し、イタリア戦で優勝するなど健闘しました。

2023年には、新たな挑戦としてダカール・ラリーに参戦。クサビエ・ドゥ・ソルトレイをドライバーに迎え、グループT4クラスで総合10位という結果を残しました。さらに、フランス国内ラリー選手権でも好成績を収めるなど、その活動は多岐に渡ります。そして2024年、ダカール・ラリー2年目の参戦で、クサビエ・ドゥ・ソルトレイがSSVクラスで総合優勝を果たすという快挙を達成しました。チーム設立者であるセバスチャン・ローブも総合3位に入るなど、チームにとって最高の結果となりました。

セバスチャン・ローブ・レーシングは、設立以来、常に新しいカテゴリーへの挑戦を続け、数々の成功を収めてきました。その挑戦心と高い技術力、そして若いドライバー育成への取り組みは、今後もモータースポーツ界において重要な存在であり続けることを示しています。

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