セルビアとコソボの関係

セルビア・コソボ二国間関係

本稿では、セルビア共和国と、2008年に一方的に独立を宣言したコソボ共和国との二国間関係について解説します。

コソボは、セルビア領であったコソボ・メトヒヤ自治州を領域として独立を宣言しましたが、セルビアはコソボを国家として承認しておらず、現在も自国の一部とみなしています。本稿では、コソボ共和国を「コソボ」と表記し、セルビアという場合はコソボを含まないものとして記述します。

独立宣言への対処

セルビアは、コソボの独立宣言に強く反対し、独立を承認した国に対しては大使の召還などの対抗措置を取りました。また、コソボの政治家に対して大逆罪で逮捕状を発行するなど、強硬な姿勢を示しました。

2008年3月には、コソボ情勢への対処を巡る意見の相違から、当時の首相が辞任し、議会総選挙が行われる事態となりました。セルビア政府内でも、コソボの分割案やEU加盟交渉の停止を求める意見が出ましたが、合意には至りませんでした。

2008年7月、セルビアはEU加盟国に大使を復帰させましたが、コソボを承認したモンテネグロやマケドニアなどに対しては、大使の召還や追放といった措置を取りました。

セルビアは、コソボの独立宣言の合法性について国際司法裁判所に判断を求めましたが、2010年7月、国際司法裁判所は独立宣言は合法であるとの判断を下しました。

ベオグラード・プリシュティナ間交渉

コソボの独立宣言後、セルビアは当初、コソボとの直接交渉を拒否していましたが、EUなどの仲介により、徐々に関係正常化に向けた動きが見られるようになりました。

2011年以降、EUはセルビアに対し、コソボとの境界問題について議論するよう求め、2013年2月には、セルビアとコソボの大統領がブリュッセルで直接会談し、連絡官を相互に派遣することとなりました。

2012年には、コソボ警察によるセルビア人の逮捕や、セルビア警察によるコソボ人の逮捕事件が発生し、緊張が高まりました。アムネスティ・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウォッチなどの国際機関は、これらの逮捕を非難しました。

2012年10月、EUの仲介により、セルビアとコソボの関係正常化に向けた交渉が開始され、移動の自由や大学の学位、地域的な国際会議への参加など、多岐にわたる合意が交わされました。

2013年4月には、両政府は関係正常化に向けた歴史的な合意を締結し、コソボに住むセルビア人のための警察組織や裁判所を設置することなどが定められました。この合意は、セルビアとコソボのEU加盟への道を開くものとして評価されました。

2020年の経済関係正常化合意

2020年9月、アメリカの仲介により、セルビアとコソボは経済関係を正常化する協定に署名しました。この協定では、鉄道・高速道路の建設やエネルギー供給、紛争中の死者・行方不明者の特定などで両国が協力することや、セルビアがコソボの国際機関加盟活動を妨害しないことなどが定められました。

また、コソボはイスラエルとの外交関係樹立で合意し、セルビアは在イスラエル大使館をエルサレムに移転することでも合意しました。

セルビアとコソボの関係は、依然として多くの課題を抱えていますが、対話と協力によって、両国が安定した未来を築くことが期待されています。

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