セルポレー式蒸気動車

セルポレー式蒸気動車

セルポレー式蒸気動車（セルポレーしきじょうきどうしゃ）は、フランスの技師レオン・セルポレーにより1887年に開発された蒸気動車の一形式です。この蒸気動車は、小型で高性能なフラッシュ蒸気ボイラーを搭載しており、外見は後のディーゼル気動車に似ています。

開発と商業化

セルポレー式蒸気動車は、1889年にパリ万国博覧会に出展され、その技術が国際的に評価されました。また、1894年にはフランス国内工業奨励賞の金賞を受賞します。この受賞を契機に、セルポレー式蒸気動車の製造販売を行う企業、Société des Genérateurs a Vaporisation Instantanée System L. Serpolletが設立され、世界市場への進出が始まりました。

この蒸気動車は、コークス燃料を使用しており、独自の半月形断面を持つ水管を利用しています。全体的にコンパクトで、高さ1.05m、幅0.57m、重量約600kgのボイラーを特徴としています。

日本における展開

日本でのセルポレー式蒸気動車は、ジイ・エス商会によって取り扱われました。彼らは、東京馬車鉄道という後の東京都電の前身にこの車両を売り込んだものの、1899年7月の試験走行を経ても採用には至りませんでした。また、東京府内では他の3つの計画路線にも関心が寄せられていましたが、どれも実現には至りませんでした。更には、広島県の呉町においても市内交通機関に使用するための提案がなされましたが、内務省に却下されています。宮城県の石巻鉄道、堀の内電気鉄道、川崎電気鉄道でもセルポレー式の認可は受けましたが、実際の導入には至らなかったのです。

瀬戸自動鉄道の導入

日本で唯一、セルポレー式蒸気動車が商業運転されたのが瀬戸自動鉄道です。1905年に名古屋鉄道瀬戸線が開業する際、A、B、Cの3両がこの車両として導入されました。車両は四輪車の設計で、セルポレーの特許技術による高性能ボイラーを搭載していました。

しかし、これらの車両は軌道線用に設計されていたため、瀬戸自動鉄道線の運行環境に適していませんでした。特に乗車定員や勾配、運行距離において現実の使用には限界がありました。都市内では主要な停留所に燃料を補給し、その後は全行程で燃料が持続することが前提でしたが、実際には途中で燃料切れになることがしばしばありました。このため、機械の精緻さと運転・整備の難しさも手伝い、安定した運行ができるまでには時間がかかりました。

開業の翌年、瀬戸自動鉄道は瀬戸電気鉄道に改称し、1907年に直流電化されました。電化工事が進む間に運転担当者は技術に慣れ、運行は安定していきました。しかし、電力供給の制約から、停電時間帯にはこの蒸気動車が運行され続けました。特に問題なく機能し続けましたが、1911年になると電気運転が常時可能になったため、セルポレー式蒸気動車は廃車となって姿を消すことになりました。

終わりに

セルポレー式蒸気動車は短期間で日本の鉄道史から姿を消しましたが、19世紀末の鉄道技術の発展期において重要な存在であり、今後もその歴史は語り継がれていくことでしょう。

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