セレブレイション (U2の曲)

セレブレイション（A Celebration）

「セレブレイション」（A Celebration）は、アイルランド出身のロックバンド、U2が1982年に発表したシングル曲です。バンドの初期作品にあたるアルバム『October』と、国際的なブレイク作となった『War』の間にリリースされた楽曲であり、当時のバンドの過渡期における重要な位置を占めています。

この楽曲のタイトルは、バンドの友人でもあった音楽ジャーナリスト、ニール・マコーミックがホットプレス誌に寄稿した、『October』を絶賛する記事が着想源となったと言われています。バンドは本作を、その後の躍進につながるようなシングルヒット曲として位置づけ、制作に臨みました。

しかしながら、A面曲としての「A Celebration」は、商業的にも批評的にもバンドが期待したほどの大きな反響を得るには至りませんでした。特に、反語的な意味合いを含む「僕は第三次世界大戦を信じている／原子爆弾を信じている／権力の存在を認めている……」といった歌詞は、リスナーにその意図が十分に伝わらず、困惑を招いた側面もあります。結果として、この曲は初期のシングルである「Another Day」などと同様に、バンドの長いキャリアの中で比較的忘れられがちな楽曲の一つと見なされるようになりました。

この楽曲にはミュージックビデオも制作されています。監督はメイアート・エイヴィスが務めました。ビデオの撮影は、アイルランドの歴史的な場所であり、映画「父の祈りを」の舞台としても知られるキルメイナム刑務所で行われました。ビデオの中で、メンバーは刑務所からの脱獄を試みる囚人を演じています。この設定について、ドラマーのラリー・マレン・ジュニアは、「バンド活動を始めたものの、誰にも成功するとは思われていなかった、まるで学校時代の自分たちのようだ」と語っており、当時のバンドの状況や心境を反映しているかのようです。

一方で、このシングルのB面に収録された「Trash, Trampoline and the Party Girl」は、A面とは対照的にファンからの熱狂的な支持を獲得しました。わずか30分という短い時間で制作されたというこの楽曲は、初期のU2の作品にはあまり見られなかった、ある種のユーモアと人間的な温かさ、そしてかすかなセックスアピールを感じさせる異色のナンバーです。

「Trash, Trampoline and the Party Girl」は、その自然発生的な魅力から、A面曲を凌駕するほどの人気を博し、Popmartツアーを除くほぼ全てのツアーでライブ演奏されました。これはU2のB面曲としては前例のない高い演奏頻度であり、アルバム未収録曲としては「11 O'Clock Tick Tock」に次いで2番目にライブ演奏回数が多い楽曲となっています。特に、この曲はライブで誰かの誕生日を祝う際に演奏されることが多く、その際には観客がステージに招き上げられ、バンドメンバーと共に踊るという、U2のライブにおける温かく象徴的な光景の一つとなっています。この楽曲は後に、『October』のデラックス・エディションにも収録され、より多くのリスナーに届けられることとなりました。

「A Celebration」シングル全体としては、A面曲は当初のヒットを目指した意図とは裏腹に埋もれがちになりましたが、B面曲がライブ定番曲として驚異的な人気を博すという、ユニークな評価のされ方をした作品です。1983年にU2がWarツアーで初めて日本を訪れた際にも、11月29日と30日の公演でA面曲である「A Celebration」が演奏されています。また、B面曲の人気も相まって、ホットプレス誌の1982年年間ベストシングルの一つにも選出されています。このシングルは、当時のU2が持つ多面性と、ライブにおけるバンドとファンとの特別なつながりを示す好例と言えるでしょう。

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