セレンディパケラトプス

セレンディパケラトプス：偶然が生んだ角竜？

セレンディパケラトプス（Serendipaceratops arthurcclarkei）は、約1億1500万年前の前期白亜紀に生息していた鳥盤類の恐竜です。オーストラリア、ヴィクトリア州のウォンタッジ層で発見された化石に基づいて、2003年にリッチ夫妻によって命名・記載されました。属名は「セレンディピティ（serendipity：偶然の発見）の角の顔」を意味し、種小名はSF作家アーサー・C・クラークに献名されています。

発見の経緯：偶然から生まれた角竜の可能性

セレンディパケラトプスの最初の化石は、1993年に「ダイナソー・コーヴ・プロジェクト」で発見された尺骨でした。当時、オーストラリアで角竜が発見されるとは考えられていなかったため、当初研究者たちは獣脚類の骨だと考えていました。しかし、ロイヤル・ティレル古生物学博物館での比較研究により、レプトケラトプスの尺骨と酷似していることが判明し、角竜である可能性が浮上しました。

分類上の謎：角竜か、それとも曲竜類か？

セレンディパケラトプスは、当初ネオケラトプス類に分類され、南半球で最初期の角竜と考えられていました。しかし、後の研究により、その分類には疑問が呈されています。2010年の包括的な調査では、尺骨が基盤的な角竜類と類似しておらず、むしろオーストラリアの曲竜類ミンミの尺骨に似ているという結論が出されました。そのため、セレンディパケラトプスは鳥盤類のどのグループに属するか不明な「疑問名」とされました。

しかし、2014年にリッチらは、ホロタイプの尺骨のプロポーションが角竜類の固有派生形質の範囲内であることを示す統計的研究を発表し、角竜説を再提唱しました。ところが、2021年の研究では、セレンディパケラトプスの尺骨が変形していることが指摘され、リッチらの結論は無効であるとされました。そして、尺骨のプロポーションから、セレンディパケラトプスは曲竜類に分類される可能性が示唆されています。

ホロタイプ標本：NMV P186385

セレンディパケラトプスは、ホロタイプ標本であるNMV P186385（単一の左尺骨）のみに基づいて知られています。保存されている尺骨の長さは約16cmで、肘頭突起は欠損しています。

まとめ：今後の研究に期待

セレンディパケラトプスの分類は、いまだに議論の余地があります。角竜であるか、曲竜類であるか、あるいは全く別のグループに属するのか、今後の研究によって明らかになることが期待されます。偶然の発見から始まったセレンディパケラトプスの物語は、恐竜研究の奥深さと、新たな発見の可能性を教えてくれます。

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