セレン酸

セレン酸の詳細解説

セレン酸は、化学式H₂SeO₄で表されるセレンのオキソ酸の一種です。セレン原子を中心として4つの酸素原子が結合しており、硫酸およびその塩と同様の四面体構造をとります。ガラスの脱色剤として利用される一方、セレン酸およびその塩は医薬用外毒物に指定されています。

セレン酸の合成

[セレン]]酸は、二酸化セレン]と過[[酸化水素(H₂O₂)を反応させることで合成されます。


SeO₂ + H₂O₂ → H₂SeO₄


無水のセレン酸結晶を得るには、この反応溶液を140℃以上の温度で減圧する必要があります。

セレン酸の化学的性質と反応

セレン酸は硫酸と同様に吸湿性の強い強酸であり、水によく溶解します。高濃度の溶液は高い粘度を示し、一水和物や二水和物の結晶として存在することもあります。また、硫酸と同様に強い脱水作用と有機物の炭化作用を有しています。

セレン酸の水和エンタルピー変化と溶解エンタルピー変化は以下の通りです。溶解熱は硫酸よりもやや小さくなりますが、これは硫酸が液体であるのに対し、セレン酸は固体であるため、融解熱分だけ小さくなるためです。

H₂SeO₄(s) + H₂O(l) ⇌ H₂SeO₄・H₂O(s) ΔH° = -24.7 kJ mol⁻¹
H₂SeO₄(s) → H⁺(aq) + HSeO₄⁻(aq) ΔH° = -51.5 kJ mol⁻¹

[セレン]]酸は、反応速度は遅いものの、硫酸よりも酸化力が強く、塩化物イオン(Cl⁻)を塩素]に[酸化する能力を持ちます。このとき、セレン酸自身は亜セレン酸(H₂SeO₃)に還元されます。さらに、熱濃セレン酸溶液は金]さえも溶解するほどの強力な[[酸化力を持ちます。その標準酸化還元電位は以下の通りです。また、210℃以上に加熱すると酸素を放出して亜セレン酸になります。

SeO₄²⁻(aq) + 4H⁺(aq) + 2e⁻ = H₂SeO₃(aq) + H₂O(l) E° = 1.151 V

セレン酸による金の溶解反応は、以下のように表されます。


6H₂SeO₄ + 2Au → Au₂(SeO₄)₃ + 3H₂SeO₃ + 3H₂O


[セレン]]酸とフルオロスルホン酸を反応させると、二フッ化二酸化セレン]が生成します([[沸点 -8.4℃)。


H₂SeO₄ + 2HO₃SF → SeO₂F₂ + 2H₂SO₄

水溶液中の電離平衡

セレン酸は水溶液中では強い二塩基酸として挙動し、第一段階の電離はほぼ完全、第二段階の電離はやや不完全です。これは硫酸とよく似た性質です。

H₂SeO₄(aq) + H₂O(l) ⇌ H₃O⁺(aq) + HSeO₄⁻(aq) pKa1 = -
* HSeO₄⁻(aq) + H₂O(l) ⇌ H₃O⁺(aq) + SeO₄²⁻(aq) pKa2 = 1.70

二段階目の解離に伴うエンタルピー変化、ギブス自由エネルギー変化、エントロピー変化は、電荷の増加に伴うイオンの水和の程度増加と、それに伴う水分子の秩序化の増加によってエントロピーが減少することを示しています。

セレン酸イオンとセレン酸塩

セレン酸の第一段階電離によりセレン酸水素イオン(HSeO₄⁻)、第二段階電離によりセレン酸イオン(SeO₄²⁻)が生成します。セレン酸イオンは正四面体構造をとり、硫酸イオンと類似しており、Se-O結合距離は166 pmです。

セレン酸塩には、セレン酸イオンを含む正塩(セレン酸塩)と、セレン酸水素イオンを含む水素塩(セレン酸水素塩)が存在します。多くのセレン酸塩は水に可溶ですが、アルカリ土類金属塩や鉛塩などは溶解度が小さく、対応する硫酸塩よりも溶解度が大きい傾向があります。

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