セントラル・ステーション

セントラル・ステーション：リオデジャネイロ中央駅で紡がれる、心の絆

1998年、ブラジルとフランス合作で制作された映画『セントラル・ステーション』（原題：Central do Brasil）は、リオデジャネイロ中央駅を舞台に、心の傷を負った女性と少年の交流を描いた感動作です。監督はヴァルテル・サレス、主演はフェルナンダ・モンテネグロと、当時子役だったヴィニシウス・デ・オリヴェイラ。手紙の代筆を生業とする元教師と、母親を亡くし父親を探し求める少年の出会いを軸に、心の温もりと旅の情景が繊細に描かれています。

主人公ドーラは、かつて教師として働いていたものの、現在はリオデジャネイロ中央駅で代筆業を営んでいます。しかし、彼女は仕事に情熱を失い、依頼された手紙を実際に送ることはほとんどありませんでした。そんなある日、彼女は一人の女性から夫への手紙を頼まれます。しかし、その女性は直後に交通事故で亡くなり、9歳の少年ジョズエが遺されます。

ドーラは当初、ジョズエを養子縁組斡旋所に預けようとしますが、その裏に臓器売買組織が潜んでいることを知り、慌てて連れ戻します。そして、ジョズエの父親を探して旅に出る決意をするのです。

旅の道中、ドーラとジョズエは様々な困難に直面します。言葉の壁や文化の違い、金銭的な問題など、互いに打ち解けられないまま、行き違いから一文無しになってしまう場面も。そんな彼らを助けてくれるのは、親切なトラック運転手セザールです。

セザールとの出会いによって、旅は一変します。楽しい時間を過ごす中で、ドーラはセザールに好意を抱くようになります。しかし、その気持ちを素直に伝え、セザールは2人を残して旅立ちます。

目的の住所にたどり着いた2人ですが、そこには既に別の家族が住んでおり、ジョズエの父親は別の町に引っ越していました。途方に暮れる2人でしたが、ジョズエの機転でドーラは再び代筆業を始め、多くの客から依頼が殺到します。仕事を通して2人の仲は急速に深まっていきます。

父親の引っ越し先を訪ねた後も、父親は姿を現しません。リオデジャネイロに戻ることを決めたドーラとジョズエですが、そこでジョズエの異母兄であるイザイアスとモイゼズに出会います。彼らは子供好きで温かい兄弟で、すぐにドーラとジョズエは打ち解けます。

イザイアスは、半年前に父親から届いた手紙をドーラに読み解いてほしいと頼みます。それは、9年前に妊娠したままリオデジャネイロへ行ったジョズエの母親アンナへの手紙でした。手紙には、父親がアンナを探しにリオデジャネイロへ行ったこと、そして手紙と行き違いになっても、アンナが手紙を読んだら待っていてほしいという切実な思いが綴られていました。

父親の意外な一面を知ったドーラは、翌朝、ジョズエを兄弟の元に残して静かに町を去ります。それに気づいたジョズエはドーラを追いかけますが、追いつくことができませんでした。バスの中で、ドーラはジョズエへの手紙を書きます。そして、2人は旅の途中で撮影した記念写真を見ながら、涙を流すのでした。

この映画は、金熊賞（最優秀作品賞）、銀熊賞（女優賞）、エキュメニカル審査員特別賞（ベルリン国際映画祭）、ゴールデングローブ賞最優秀外国語映画賞など、数々の賞を受賞しています。フェルナンダ・モンテネグロの演技は高く評価され、アカデミー主演女優賞にもノミネートされました。

『セントラル・ステーション』は、社会の片隅で生きる人々の温かい人間模様と、旅を通して変化していく心の機微を丁寧に描いた、忘れがたい名作です。心に響く感動と、静かな余韻を残す作品として、多くの人々の記憶に刻まれています。

なお、ジョズエ役のヴィニシウス・デ・オリヴェイラは、その後もヴァルテル・サレス監督作品に出演しており、『リーニャ・ヂ・パッシ』では、サッカー選手を目指す長男ダリオ役を演じています。ダニエラ・トマス共同監督によると、このダリオは『セントラル・ステーション』のジョズエの10年後という設定になっていますが、直接的な続編ではなく、別の物語として描かれています。

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