セント・トーマス (曲)

セント・トーマスについて

「セント・トーマス」（St. Thomas）は、アメリカのテナー・サックス奏者ソニー・ロリンズが演奏することで広く知られるインストゥルメンタル曲です。この曲は一般的にロリンズの作曲とされていますが、実際にはイングランドの伝承歌曲である「The Lincolnshire Poacher」に基づいています。この伝承歌は、民間伝承の過程で「子守唄」として変貌を遂げ、ロリンズの母が彼に歌い聞かせていたことから、この曲にはカリブ音楽のリズム感が色濃く反映されているのです。評論家の小川隆夫は、ジャズシーンにカリプソのリズムが登場したのはこの曲が初めてだと指摘しています。

発表と影響

1956年、ロリンズのアルバム『サキソフォン・コロッサス』の冒頭トラックとして「セント・トーマス」は世に出ました。リリース後、この曲は急速に人気を博し、今やジャズのスタンダードナンバーとして多くのアーティストに演奏されています。その魅力は、躍動的なリズムとキャッチーなメロディーにあり、聴く者を惹きつけてやみません。

他の録音バージョン

「セント・トーマス」は、さまざまなアーティストによって異なる名称で録音されています。例えば、1956年にはランディ・ウェストンが「Fire Down There」というタイトルで早々に録音し、アルバム『Get Happy』に収録しました。この際、作曲者には「トラディショナル」とのクレジットが与えられています。

また、ジャマイカのスカの先駆的なバンド、スカタライツは1976年にこの曲を「Musical Communion」として録音しました。このバージョンは、同年に発表されたドン・ドラモンドのアルバム『Jazz Ska Attack』に収録されています。スカタライツはもともとジャズミュージシャンであり、カリプソ音楽との関わりが深い彼らにとって、この曲は自然な形で取り入れられたのです。

おもなディスコグラフィ

「セント・トーマス」は、多くのアーティストによって演奏され続けています。例えば、2009年にはダラス・オリジナル・ジャズ・オーケストラがこの曲を収録したアルバム『Where There's Smoke』をリリースしています。また、1976年にはジーン・グローヴァーがビッグ・バンド用に編曲した作品も存在します。

まとめ

「セント・トーマス」は、ジャズの世界におけるダイナミックなリズムとメロディーを融合させた名曲であり、その影響は広く認識されています。ソニー・ロリンズが残したこの作品は、アメリカの音楽シーンの重要な一部となっており、多くの演奏者に愛され続けているのです。カリブの風を感じさせるこの名曲は、今後も多くの人々に聴かれ続けることでしょう。

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