ゼロ・トレランス方式

ゼロ・トレランス方式とは：詳細解説

ゼロ・トレランス方式（zero-tolerance policing）とは、問題行動に対して一切の寛容性を持たず、厳格な処分を行う教育方針です。1990年代にアメリカで始まり、学校における問題行動の対策として導入されました。本記事では、ゼロ・トレランス方式の概要、批判、そして日本における導入状況について詳しく解説します。

ゼロ・トレランス方式の概要

背景

1970年代以降のアメリカでは、学級崩壊が深刻化し、学校内での銃の持ち込み、薬物汚染、暴力、いじめなど、様々な問題が発生しました。これらの問題に対処するため、ゼロ・トレランス方式が導入されました。

具体的な内容

ゼロ・トレランス方式では、校内での行動に関する詳細な罰則を定め、違反者には例外なく罰を与えます。これにより、生徒に責任を自覚させ、改善を促します。改善が見られない場合は、オルタナティブスクールへの転校や退学処分も科されます。軽い罰としては、放課後居残りや土曜日の登校などがあります。

アメリカでは、問題行動のエスカレートを防ぐため、遅刻や宿題未提出などの比較的軽い問題行動も罰せられます。学校の評判が問われるため、問題生徒に罰を与え、自覚させることが重要視されます。

アメリカでの普及

1980年代以降、歴代大統領がゼロ・トレランス方式を標語として打ち出し、1990年代に本格的に導入が始まりました。1994年には、アメリカ連邦議会が各州に同方式の法案化を義務付け、1997年にはビル・クリントン大統領が全米に導入を呼びかけ、一気に広まりました。

ゼロ・トレランス方式への批判

ゼロ・トレランス方式に対しては、「社会からのドロップアウトを増やす」という批判があります。また、過剰な適用事例も問題視されています。

ダーク・ポエトリー事件

2001年にカリフォルニア州で発生した「ダーク・ポエトリー事件」では、15歳の少年が書いた詩の内容が問題視され、100日間の自宅謹慎処分を受けました。この処分は過剰であるとして批判され、少年は提訴し、2004年にカリフォルニア州最高裁判所で勝訴しました。

ステーキナイフ事件

2007年12月には、10歳の小学生が昼食時に持参したステーキナイフで食べ物を切り分けたことが、「学校への武器持ち込み」と判断され逮捕されるという事件が発生しました。周囲の児童は、少女がステーキナイフで誰かを傷つけたわけではないと証言しましたが、少女は児童観察施設に送られました。その後、この処分は過剰であったとして全て撤回されました。

日本での導入

日本では、1997年の神戸連続児童殺傷事件以降、「命を大切にする教育」が推進されてきました。しかし、2004年の佐世保小6女児同級生殺害事件や、新潟県三条市での小学生切りつけ事件など、子供による重大事件が相次ぎ発生し、社会に大きな衝撃を与えました。

文部科学省の取り組み

これらの事件を受け、文部科学省は「児童生徒問題行動プロジェクトチーム」を始動させ、2006年春にまとめた新たな防止策に「ゼロ・トレランス方式の調査研究」を盛り込み、教育現場への導入の是非を検討しています。

各地域での動き

広島県議会では2004年9月に県内の公立学校への導入が議論されました。大阪市教育委員会も、生徒間や教員への暴力行為の増加等の問題を踏まえてゼロ・トレランス方式の導入を検討しています。岡山学芸館高等学校は、「義務」と「責任」を理解させるためとして、ゼロ・トレランス方式を公式に導入しています。

まとめ

ゼロ・トレランス方式は、問題行動に対する厳格な処分を通じて、学校秩序を維持し、生徒の責任感を育成することを目的としています。しかし、過剰な適用による弊害も指摘されており、導入にあたっては慎重な検討が必要です。日本においては、子供による重大事件の多発を背景に、ゼロ・トレランス方式の導入が検討されていますが、その是非については様々な意見があります。

もう一度検索