ソウル20人連続殺人事件

ソウル連続殺人事件

「ソウル20人連続殺人事件」は、2003年9月から2004年7月にかけて、韓国の首都ソウル特別市を舞台に発生した一連の凶悪な連続殺人事件である。この事件では、主に富裕層の高齢者や、いわゆる風俗業に従事する女性たちが狙われ、最終的に合計20人が命を落とした。事件は、2004年7月に犯人が逮捕されるまで約10ヶ月間にわたり続いた。

事件の発生と経過

最初の犯行は、2003年9月24日、ソウル特別市江南区新沙洞で発生した。この日、大学の名誉教授とその妻である高齢者夫婦が自宅で殺害されているのが発見された。この事件を皮切りに、ソウル市内の各地で同様の殺人事件が相次いで発生する。犠牲者は富裕層の高齢者宅への侵入による殺害と、風俗業に従事する女性に対する殺害という、二つの傾向が見られた。捜査当局は当初、異なる犯人による事件の可能性も視野に入れていたが、やがて一連の事件に関連性があることが判明し、連続殺人事件として捜査が進められた。

犯人：ユ・ヨンチョル

この事件の犯人として逮捕されたのは、ユ・ヨンチョルという男であった。彼は逮捕後、自らの犯行を認め、合計21人の殺害について供述したが、そのうち1件は証拠不十分で不起訴となっている。ユ・ヨンチョルは単なる殺人犯ではなく、一部の犠牲者の遺体について、焼却や解体を行ったほか、内臓を食したことを自白するなど、人肉愛好とも取れる異常な傾向を示した。

彼の人生は、不幸な生い立ちから犯罪へと傾倒していった経緯を持つ。1970年、韓国の全羅北道で生まれたユ・ヨンチョルは、中学校1年生の時に父親を亡くしている。中学校卒業後は工業高校に進学するも、高校2年生の時に窃盗事件を起こして少年院送致となり、高校を中退。この出来事が彼のその後の人生に暗い影を落とし、以降、窃盗や性犯罪を繰り返し、人生の約11年間を刑務所で過ごすこととなる。

21歳の時には風俗業に従事する女性と結婚するが、結婚後も犯罪を重ねたため、妻は彼の度重なる逮捕や服役生活に耐えかね、2002年5月に離婚訴訟を起こし、離婚が成立した。後にユ・ヨンチョルは、風俗業の女性をターゲットにした理由の一つとして、元妻への当てつけがあったことを示唆している。彼の犯行の動機については、自身の供述やテレビ番組での発言から、特定の女性や富裕層に対する強い憎悪があったことが明らかになっている。彼は、女性は「ふしだらであるべきではない」とし、富裕層は「自分たちの所業を知るべきだ」と語っている。

逮捕、捜査、そして裁判

ユ・ヨンチョルは、2004年7月に逮捕された。逮捕後の捜査段階で、彼は当初合計26人を殺害したと供述したが、当局による捜査の結果、最終的に21件について殺人罪で起訴された。しかし、このうち1件については、後に別の連続殺人事件（ソウル西南部連続殺人事件）の犯人による犯行であることが判明している。

興味深いことに、ユ・ヨンチョルは今回の連続殺人事件での逮捕に先立つ2004年1月にも、窃盗の微罪で一度逮捕されていた。しかし、この時はわずか2日後に釈放されており、もしこの時点で彼の連続殺人犯としての正体が見抜かれていれば、その後の犠牲者は出なかった可能性がある。

裁判では、その残虐な犯行と異常な動機が明らかになった。2004年12月13日、ソウル中央地方法院はユ・ヨンチョルに対し死刑判決を言い渡した。彼はこの判決を不服として控訴したが、翌2005年6月、韓国大法院（最高裁判所）は上告を棄却し、死刑判決が確定した。

この事件は、韓国社会に大きな衝撃を与え、犯罪捜査の体制や、社会の貧富の差、女性への偏見など、様々な問題について議論を巻き起こすこととなった。ユ・ヨンチョルは現在も韓国で死刑囚として収監されている。

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