ソニア・ガンディー

ソニア・ガンディー（Sonia Gandhi）は、1946年12月9日にイタリアで生を受けた、インドの著名な政治家です。統一進歩同盟（UPA）の元議長や、インド国民会議の元暫定総裁を務めるなど、長きにわたりインド政界の中枢で活躍しています。

イタリア北東部のヴェネト州、ヴィチェンツァ県ルジアーナ出身。カトリック教徒の家庭で育ちました。1964年、英語を学ぶためにイギリスへ渡り、ケンブリッジの語学学校で学んでいる最中に、ケンブリッジ大学に留学していたラジーヴ・ガンディー氏と出会います。二人は愛を育み、1968年に結婚。ラジーヴ氏の母は当時インド首相であったインディラ・ガンディー氏でした。結婚後、二人の間には1970年に長男ラーフル氏、1972年に長女プリヤンカ氏が誕生しました。

結婚当初、ラジーヴ氏もソニア氏も政治の世界からは距離を置いていました。しかし、1980年にラジーヴ氏の弟サンジャイ・ガンディー氏が飛行機事故で急逝したことを機に、ラジーヴ氏は政界に足を踏み入れます。さらに1984年、母インディラ・ガンディー首相が暗殺されるという悲劇が起こると、ラジーヴ氏はその後継者として首相の座に就任。ソニア氏はインドのファーストレディとして、夫を支える立場となりました。

1991年、夫ラジーヴ氏もまた暗殺という非業の死を遂げます。ラジーヴ氏の死後、国民会議はナラシンハ・ラーオ氏の下で同年の総選挙に勝利を収めたものの、続く1996年総選挙では敗北を喫し、党勢は低迷します。この状況を打開するため、低迷する党勢の回復を願う声が高まり、ラジーヴ氏の妻であるソニア氏への期待が集まりました。こうした周囲からの強い要請に応える形で、ソニア氏は1997年に国民会議への入党を決意。そして翌1998年3月14日には、党の最高指導者である総裁に選出され、本格的に政治活動を開始します。

1999年4月、当時のバジパイ首相に対する信任決議が下院で否決され、与党であるインド人民党を中心とする連立政権が崩壊しました。国民会議は第二党であったため、その総裁を務めるソニア氏が首相候補としてその名が挙がりました。しかし、政権樹立に必要な過半数の支持を得る多数派工作が叶わず、組閣には至りませんでした。下院は解散され、同年の総選挙でソニア氏は国会議員に当選を果たしたものの、インド人民党が勝利したため政権奪還はなりませんでした。選挙後、ソニア氏は下院における野党のリーダー、すなわち院内総務の任に就き、政権を厳しく追及する立場となりました。

2004年総選挙では、ソニア氏のリーダーシップの下、国民会議を勝利へと導き、見事に政権を奪還する偉業を成し遂げます。選挙後の5月15日、国民会議の両院議員総会において、ソニア氏は首相候補として正式に選出されました。多くの人々がソニア氏の首相就任を確実視しましたが、イタリア生まれであることへの一部からの根強い批判もありました。熟慮の末、ソニア氏は2004年5月18日の両院議員総会で、自らの首相就任を固く辞退するという驚くべき決断を下します。そして、代わりにマンモハン・シン氏を首相に指名し、自身は党のトップとして政権を支える道を選びました。

2006年3月、ソニア氏は下院議員と国家諮問委員会議長の職を辞任しました。これは、国会議員が有給職を兼ねることを禁じる規定に抵触しているとの批判を回避するためとされています。その後、同年5月に実施された下院の補欠選挙に再び立候補し、対立候補に圧倒的な差をつけて当選を果たし、政治家としての地位を揺るぎないものとしました。2019年には、長男であるラーフル・ガンディー氏が国民会議派総裁を退任したことを受け、暫定総裁として再び党を率いることになりました。

長男ラーフル・ガンディー氏は、母や祖母、曾祖父たちに続く政治家としての道を歩んでおり、2004年に下院議員に選出されて以来その職を務めています。また、国民会議の幹事長としても活躍しています。長女プリヤンカ・ヴァドラ氏は、公式には政界入りしていませんが、国民会議の選挙活動において積極的に応援演説を行い、その存在感を示しています。彼女の人気は高く、その姿から祖母であるインディラ・ガンディー氏の再来と評されることもあります。

ソニア・ガンディー氏は、異国の地からインドに嫁ぎ、夫と義母の死という悲劇を乗り越え、インド最大の政党である国民会議を率いて政権奪還を果たすなど、波乱に満ちた政治人生を送ってきました。首相の座を固辞した決断は、インド国民に大きな衝撃を与えましたが、同時に彼女の求心力を高めることにも繋がりました。インド政治において、ガンディー王朝の一員として、また一人の力強い指導者として、ソニア・ガンディー氏が果たした役割と影響力は計り知れません。

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