ソユーズ23号

ソユーズ23号ミッション

1976年に行われたソビエト連邦の有人宇宙飛行ミッション、それがソユーズ23号です。この飛行の主な目的は、当時軌道上にあった宇宙ステーション「サリュート5号」を訪れることでした。乗組員には、船長のヴャチェスラフ・ズードフ飛行士と、フライトエンジニアのワレーリ・ロズデストベンスキー飛行士が搭乗しました。彼らにとって、これが初めての宇宙飛行経験となります。

ミッションは1976年10月14日に開始され、ソユーズ23号はカザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地から打ち上げられました。当初の計画では、サリュート5号に約17日から最大85日間滞在する可能性が想定されていました。これは、先にサリュート5号を訪れたソユーズ21号ミッションが予期せず早期に中断された後、初めてのステーションへのアクセス試みでした。

しかし、打ち上げ翌日の10月15日、ソユーズ23号がサリュート5号への自動接近を試みていた際、問題が発生しました。ステーションから約100メートル以内というドッキング直前の段階で、宇宙船に搭載されていた自動ドッキングシステムが突如として故障してしまったのです。乗組員は手動でのドッキング操作に関する訓練は受けていましたが、実際に手動での接近訓練は行っていませんでした。そのため、このシステム故障はミッションの継続を不可能とし、サリュート5号へのドッキングは断念され、ミッションは中止せざるを得なくなりました。

ドッキングを断念したソユーズ23号は、軌道上で地球への帰還機会を待つことになりました。宇宙船に残された電力はわずか2日分であったため、可能な限りの電力を節約するため、無線通信を含む多くのシステムが停止されました。その日の着陸機会は既に過ぎていたため、乗組員はバイコヌール宇宙基地周辺での翌日の着陸を待ちました。

そして10月16日、ソユーズ23号は地球へ帰還の途に就きました。しかし、その着陸は極めて異例かつ困難なものとなりました。宇宙船は予定された陸上ではなく、カザフスタン中央部にある凍結したテンギス湖の、岸から約8キロメートル沖合に着水したのです。これは、ソビエト連邦の有人宇宙飛行史上、初めての着水事例となりました。当時の気象条件は非常に悪く、嵐が吹き荒れ、気温は摂氏マイナス22度という過酷な環境でした。

ソユーズ宇宙船のカプセルは水上着陸にも対応できるよう設計されていましたが、着水直後、パラシュートが水を吸い込み、カプセルは水面下に引きずり込まれる形となりました。幸いにもカプセルは浸水することなく、乗組員は内部で待機することができました。彼らは万一に備えていた圧力服を脱ぎ、通常の飛行服に着替えて救助を待ちましたが、カプセル内の電力はほとんど尽きかけており、小さな内部灯を除いて全てのシステムがオフにされました。

救出活動は直ちに開始されましたが、濃い霧のためにカプセルの位置を示すビーコン信号が視認できず、困難を極めました。救命用のゴムボートは湖を覆う氷や雪に進路を阻まれ、カプセルに接近できませんでした。水陸両用車も近くまで空輸されましたが、湖周辺の湿地帯に阻まれ、カプセルまで到達できませんでした。悪天候と視界不良のため、救出活動は夜明けまで中断されることになりました。

乗組員はカプセル内で安全を確保していましたが、気温は低く、状況は厳しさを増していました。翌朝、夜明けとともに救出活動が再開されました。ヘリコプターから降下した潜水隊員が、カプセルに浮上装置を取り付け、乗組員を安全に救助艇へ移しました。カプセル自体は、水を含んで重くなったためヘリコプターで吊り上げることはできず、氷上を牽引して岸まで運ばれました。この前代未聞の救出作戦は、着水から乗組員が救出されるまで、およそ9時間という長い時間を要しました。

ソユーズ23号ミッションは、技術的な問題によるドッキング失敗と、それに続く極めて困難な着水・救出劇という、ソビエトの宇宙開発史における特異な事例として記憶されています。このミッションは、宇宙船の緊急時の対応能力や、過酷な環境下での救出体制における貴重な教訓となりました。

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