ソユーズT-1

ソユーズT-1

新型ソユーズの無人検証飛行

ソユーズT-1（Soyuz T-1、ロシア語: Союз Т-1）は、1979年12月から1980年3月にかけてソビエト連邦（当時）によって実施された無人宇宙ミッションです。これは、改良型ソユーズ宇宙船「ソユーズ7K-ST」の性能と信頼性を確認するために行われた一連の無人試験飛行の一つであり、特に軌道上の宇宙ステーション、サリュート6号へのドッキング試験を主要な目的としていました。質量は約6,450キログラムでした。

ミッションの背景と打上げ

サリュート6号には1979年夏まで長期滞在クルー（ソユーズ32号ミッションの宇宙飛行士）が滞在していましたが、彼らが帰還した後、約4ヶ月間ステーションは無人の状態でした。ソビエトは新しいソユーズの試験を計画しており、1979年末の打上げが待たれていました。ソユーズT-1は、バイコヌール宇宙基地のガガーリン発射台から、現地時間1979年12月16日に宇宙へと送り出されました。これは、ソユーズ7K-STとしては4回目の無人飛行試験でしたが、このミッションから初めて「ソユーズ」の名称が正式に与えられました。

サリュート6号とのドッキングと軌道運用

打上げから2日後の12月18日、ソユーズT-1はサリュート6号に接近を試みましたが、最初の試みではドッキングポートを通り過ぎてしまいました。しかし、翌日の12月19日に2度目のドッキング試みが成功し、ソユーズT-1はサリュート6号の前方側にあるポートに無事結合しました。

ソユーズT-1は、その後の約95日間にわたりサリュート6号にドッキングしたまま滞在しました。この期間中、ステーションは無人運用が続けられました。特筆すべき運用として、ドッキング中の12月25日には、ソユーズT-1のスラスタを用いてサリュート6号の軌道を押し上げ、高度を調整するマヌーバが実施されました。

珍しい運用方法とその意義

ソユーズT-1ミッションには、従来の無人宇宙船ミッションとは異なるいくつかの特徴的な運用方法が見られました。一つは、サリュート6号にドッキングしている間、ソユーズT-1の主要な電源を落とさずに維持した点です。これは、より柔軟な運用や緊急時への対応能力を高めるための試験であったと考えられます。

さらに、通常、ソユーズ宇宙船が軌道から離脱する際に、軌道モジュール、帰還モジュール、機械船の全てが結合したまま逆噴射を行いますが、ソユーズT-1では推進剤の消費を抑えるため、逆噴射の直前に不要となった軌道モジュールを意図的に切り離しました。この分離によって、宇宙船の質量が軽くなり、より効率的に軌道を変更するためのマヌーバを数多く実行することが可能となりました。これらの運用は、将来の有人長期滞在ミッションや、より複雑な軌道操作を行うための技術的な知見を得る上で非常に重要でした。

ミッションの終了

長期にわたるサリュート6号とのドッキング期間を経て、ソユーズT-1は1980年3月23日にステーションからドッキングを解除しました。その後、数日間にわたって軌道上での最終的な試験が実施されました。そして、1980年3月25日に軌道から離脱し、地球へと帰還しました。この帰還日は、通常予定される着陸ウィンドウから少し外れていましたが、これはソビエトが次の有人ミッションであるソユーズ35号の打上げを、その後の4月に予定していたため、それに合わせたスケジュール調整であったとされています。

ソユーズT-1ミッションは、新型ソユーズ宇宙船の信頼性、特に宇宙ステーションとの自動ドッキング能力や、長期にわたる軌道上での運用能力、さらには推進剤効率を高めるための新しい運用手法などを検証した点で、ソビエトの有人宇宙開発プログラムにおける重要なステップとなりました。

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