ソユーズT-12

ソユーズT-12ミッション

概要

ソユーズT-12ミッションは、ソビエト連邦が運用していた宇宙ステーション「サリュート7号」へ向けて行われた、有人宇宙飛行としては7回目にあたる重要な往来飛行でした。このミッションは、特に宇宙空間での船外活動（EVA）技術の進歩と実証に焦点を当てており、複数の歴史的な瞬間を含んでいます。

乗組員

ソユーズT-12の打上げ時における主要な乗組員は以下の3名でした。

ウラジミール・ジャニベコフ（飛行回数：4回目）
スベトラーナ・サビツカヤ（飛行回数：2回目）
* イゴール・ボルク（飛行回数：1回目）

特筆すべき点として、リサーチコスモノートとして参加したイゴール・ボルクは、ソ連版スペースシャトル計画である「ブラン」プログラムのために選ばれたパイロットの一人でした。

主要な出来事：画期的な船外活動

ソユーズT-12ミッションにおける最も記憶されるべき出来事は、軌道上で行われた船外活動です。1984年7月25日、ウラジミール・ジャニベコフとスベトラーナ・サビツカヤのペアによって、この重要な宇宙遊泳が実施されました。活動時間は3時間30分に及びました。

この船外活動の大きな目的の一つは、「URI多機能ツール」と呼ばれる新しい種類の宇宙作業用工具の性能を、実際の宇宙環境で試験することでした。さらに、彼らは宇宙空間の真空下で、金属サンプルに対して切断、溶接、はんだ付け、そして塗装といった一連の加工作業を行いました。これは、軌道上での構造物の修理、組み立て、または改修といった将来的な宇宙活動において不可欠となる技術の実証であり、その後の宇宙ステーション建設や長期滞在ミッションの基盤となる重要な実験でした。

女性として初の宇宙遊泳

この船外活動は、宇宙開発の歴史において特筆すべきマイルストーンでもありました。スベトラーナ・サビツカヤは、この時、女性として史上初めて宇宙空間での船外活動を行った人物となったのです。これは、1963年にワレンチナ・テレシコワが女性初の宇宙飛行士となって以来、宇宙における女性の活動領域をさらに広げる画期的な出来事であり、世界の宇宙関係者から大きな注目を集めました。

ステーション内の状況

ジャニベコフとサビツカヤが船外活動を実施している間、宇宙ステーション「サリュート7号」内には、ソユーズT-11ミッションからの滞在者などを含む、合計6名の宇宙飛行士が滞在していました。ステーション内では、外部での船外活動と並行して、科学実験やステーションの維持活動が続けられていました。

その中には、宇宙ステーション構造の共鳴特性を詳細に調査する試験や、長期滞在環境下での空気組成や品質の変化を監視するための空気サンプルの収集といった重要な作業が含まれていました。これにより、ステーションの安全性や長期的な運用可能性に関する貴重なデータが得られました。

ミッションの意義

ソユーズT-12ミッションは、短期間のサリュート7号への往来ではありましたが、特に船外活動の分野でソビエト連邦の宇宙開発能力を示す重要な機会となりました。女性初の宇宙遊泳の成功、新しい宇宙ツールの試験、そして宇宙空間での高度な金属加工技術の実証は、将来のより複雑で野心的な宇宙ミッション、特に国際宇宙ステーション（ISS）のような大型構造物の軌道上での組み立てや維持管理に向けた貴重な経験と技術的基盤を提供しました。このミッションは、宇宙における人類の活動範囲と能力を拡大する上での重要な一歩として、歴史にその名を刻んでいます。

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