ソユーズTM-9

ソユーズTM-9

ソユーズTM-9は、1990年8月、当時のソビエト連邦が運用していた宇宙ステーション「ミール」へ向かった、通算9回目の有人宇宙飛行任務です。このミッションは、ミールへの新しい長期滞在クルーを送り届けることを目的としていました。

搭乗クルー

本ミッションには、以下の2名の宇宙飛行士が搭乗しました。

アナトリー・ソロフィエフ（2回目の宇宙飛行）
アレクサンドル・バランジン（1回目の宇宙飛行）

ミッション中に発生した問題

ソユーズTM-9が宇宙ステーション「ミール」に接近し、ドッキングを試みていた際に、ミール滞在中のクルーはソユーズTM-9の機体外観に異常があることを発見しました。地球への帰還時に使用される帰還モジュールを覆う8枚の耐熱ブランケットのうち、3枚が機体から剥がれかかっている状態だったのです。

この耐熱ブランケットの剥離は、複数の深刻な技術的懸念を引き起こしました。

1. 帰還モジュールの温度と気圧: ブランケットがないことで、帰還モジュールが過度に冷却されること、あるいは内部気圧が高まり、搭載された電子機器がショートする危険性が指摘されました。
2. 再突入時の姿勢制御: 再突入に不可欠な赤外線センサーが剥がれたブランケットによって遮蔽され、正確な姿勢制御が困難になる可能性が浮上しました。

さらに、帰還モジュールと後方のサービスモジュールを結合する分離用爆発ボルトや、機体を保護する耐熱シールドが宇宙空間に直接露出し、機能不全に陥るリスクも懸念されました。

対応策と帰還手順の変更

これらの問題に対処するため、船外活動（宇宙遊泳）による応急修理が必要と判断されました。しかし、船外での作業が機体にさらなる損傷を与えるリスクも考慮されました。万一の事態に備え、乗員1名体制の後続機ソユーズTM-10を救援のために準備する計画も進められました。

最終的に実施された船外活動では、剥がれかかっていた3枚の耐熱ブランケットのうち2枚を折り畳んで固定することに成功しましたが、残る1枚は固定が困難でした。

地球への帰還時にも、剥がれたブランケットが問題を引き起こす可能性がありました。通常、再突入時には軌道モジュールを先行して分離しますが、ブランケットがこの分離を妨げる懸念から、ソユーズTM-9では軌道モジュールとサービスモジュールを同時に分離するという、異例の措置が取られました。

ミッションの完了

こうした周到な対策と異例の運用により、ソユーズTM-9の帰還モジュールは再突入時のトラブルもなく、無事に地球へ帰還することができました。このミッションは、宇宙空間での予期せぬ技術的問題に対し、クルーと地上のチームが連携して困難を克服した事例として特筆されます。

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