ソールズベリー大聖堂

ソールズベリー大聖堂：イギリス・ゴシック建築の粋

ソールズベリー大聖堂は、イギリス南部の都市ソールズベリーにそびえ立つ、壮麗なゴシック建築の大聖堂です。正式名称を「祝福されし聖処女マリア主教座聖堂」といい、イングランド国教会のカンタベリー大聖堂管区、ソールズベリー教区の主教座聖堂として重要な役割を担っています。

歴史：統一された様式美

1220年に建設が開始され、1258年には身廊、翼廊、聖歌隊席などの主要部分が完成しました。その後、1263年にチャプター・ハウス（司祭会議場）と回廊が、1265年には西ファサードが完成。1330年には、高さ123メートルを誇る尖塔が完成し、イギリスの聖堂で最も高い尖塔となりました。

ソールズベリー大聖堂の特筆すべき点は、ケルン大聖堂のように既存の建物を建て替えるのではなく、比較的短い期間で完成したため、全体の様式が統一されていることです。当初の計画に基づいて建設された数少ない大聖堂であり、長い歴史の中で改築による変化も少なかったため、中世イングランドにおける大規模ゴシック建築の様式を今に伝える貴重な存在となっています。

また、大聖堂の建設には、イギリス南部の海岸で産出されたパーベック大理石が多用されています。現在ではほとんど採掘されていないこの大理石をイギリス全土の教会で最も多く使用しており、多彩な色彩効果を生み出し、大聖堂の美しさを一層際立たせています。

建築的特徴：初期イギリス式ゴシック様式

ソールズベリー大聖堂は、「初期イギリス式ゴシック様式（アーリー・イングリッシュ）」と呼ばれる様式で建てられています。この様式は、フランスのゴシック建築の影響を受けつつも、イギリス独自の発展を遂げたもので、シンプルで洗練されたデザインが特徴です。

内陣は非常に長く、大小2つの突出した交差廊を持つのが特徴です。これは、クリュニー第3教会堂の影響を受けていると考えられています。内陣の東壁とその後ろに続く低い奥内陣の東壁は、窓のある垂直の壁面で終わり、壁体はすべて直交していますが、全体として堅い印象を与えないのが特徴です。

東端部の外観は、水平に広がっている建物の上に大きな塔が立ち上がっており、変化に富んでいて全体的に垂直方向の軸があります。また、側廊の外側に小さな鐘塔を配置しているため、西側の正面は後ろの建物との結びつきが弱く、ややまとまりのない印象を与えます。

外陣の幅は23メートル、身廊の天井高さは25メートル。東端部の奥内陣は、3廊等高のヴォールトを架けた広間ですが、そのヴォールトを支えるピアは、細いパーベック大理石の円柱を組み合わせたもので、軽やかな印象を与えます。

大聖堂の宝物：マグナ・カルタと世界最古の時計

ソールズベリー大聖堂の図書館には、マグナ・カルタの現存する4つの写本のうち、最も状態の良いものが保管されています。マグナ・カルタは、1215年にジョン王が貴族たちに認めざるを得なかった、王権を制限し、国民の自由を保障する内容が記された文書であり、民主主義の基礎となった重要な歴史的資料です。

また、大聖堂には、1386年に製造された「ソールズベリー大聖堂の時計」があります。これは、現在でも稼働するものとしては世界最古の時計として知られており、オリジナルの部品も多く残されています。中世の技術の粋を集めたこの時計は、大聖堂の貴重な宝物の一つです。

近年の修復：文化遺産の保護

大聖堂のような石造りの建物には、常に補修が必要です。18世紀から20世紀にかけて、大聖堂は大規模な修復工事が行われました。19世紀の改修工事では、ジョージ・ギルバート・スコットが天井に中世風の絵画を描いたり、大尖塔を鉄の筋交いで補強するなどの改修を行いました。近年も、大聖堂の維持と保護のために、継続的な修復作業が行われています。

ソールズベリー大聖堂は、その美しい建築様式、豊かな歴史、そして貴重な宝物を通じて、訪れる人々に感動を与え続けています。イギリスを訪れる際には、ぜひ足を運んでみてください。

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