ゾング号事件

ゾング号事件についての詳細

概要

1781年にイギリスの奴隷船ゾング号で発生した事件は、船員たちがアフリカ人奴隷を海に投げ捨て、その結果合計132人が死亡したという衝撃的な出来事です。この事件は、奴隷貿易の暗黒面を浮き彫りにし、イギリスでの奴隷廃止運動に大きな影響を与えました。

ゾング号の航海

ゾング号は、リヴァプールを拠点とした商人グレグソンの一団によって購入され、大西洋を横断する奴隷貿易に使用されました。1781年8月18日にアフリカのアクラを出発し、442人の奴隷を乗せてジャマイカへ向かいました。しかし、不幸なことに、船は途中で水不足に見舞われ、11月29日から数日にわたって奴隷が海に投げ捨てられました。船は12月22日にジャマイカに到着した際、奴隷は208人しか残っていませんでした。

船員の判断

水の不足を理由に奴隷を投げ捨てる決定がなされたこの行為は、後に法廷で争われることになります。ゾング号の所有者は、奴隷には保険がかけられており、処分した奴隷に対する保険金の支払いを求めましたが、裁判は長引きました。最終的には、船員の判断に過失があったと認定され、保険の支払い請求は却下されました。

法廷闘争

この事件は裁判を通じて、奴隷の命を商品とみなす保険の在り方が問われることとなります。1792年4月、裁判は王座裁判所に持ち込まれ、話題になりました。裁判の結果、船員が犯した過失の責任を問う声が強まりましたが、奴隷殺害に関しては法的に問われることはありませんでした。この事件は、奴隷貿易廃止運動家とつながりがあり、興味を持つ人々を増加させました。

社会的影響

ゾング号事件は、18世紀後半から19世紀初期にかけての奴隷制度廃止運動に影響を及ぼすことになり、1787年に奴隷貿易廃止協会が設立されるきっかけとなりました。また1788年には奴隷貿易を規制するドルベン法が制定され、奴隷の輸送人数に制限が設けられました。

文学と文化

この事件は様々な文学作品やアートに影響を与え、多くの作家やアーティストが奴隷貿易の恐ろしさを題材にしました。特に、トマス・クラークソンの著作やターナーの絵画『奴隷船』がその例です。これらの作品は、奴隷制度に対する批判の声を高め、広く認識を得る手助けとなりました。

現代における評価

ゾング号事件は、その影響力から現在でも語り継がれ、多くの学問的研究や芸術作品の題材となっています。事件を記念するための碑や追悼式典も行われ、歴史の重要な一側面として位置づけられています。奴隷制度がもたらした悲劇の理解を深める重要な出来事として、今後もその影響は続いていくことでしょう。

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