タイとカンボジアの国境紛争

タイとカンボジアの国境紛争の歴史

タイとカンボジアの国境紛争は、2008年に勃発したプレアビヒア寺院の帰属を巡る問題から始まりました。この争いは、両国の歴史的背景に根差したものであり、1863年にフランスがカンボジアを植民地化したことにさかのぼります。

歴史的背景

フランスはカンボジアを支配する過程で、当時のシャム（現在のタイ）の領土であった北部地域を割譲しました。国境線はダンレック山地の分水嶺をもとに設定されましたが、フランス側の境界線の定義とタイ側の解釈には食い違いが生じました。そのため、プレアビヒア寺院の帰属が明確にならず、対立の種がまかれることとなります。

第二次世界大戦後、タイはプレアビヒア寺院を実効支配し、自国の警備兵を常駐させる状況が続きました。しかし独立したカンボジアは、寺院の領有権を国際司法裁判所に提訴し、1962年の判決でカンボジアの主権が認められました。それでもタイはこの決定に対して不満を抱き、密かに影響力を試みていました。

軍事衝突の勃発

2008年初頭、カンボジア政府はプレアビヒア寺院をUNESCOの世界遺産に申請しました。これを受けて、世界遺産委員会は寺院をカンボジアの世界遺産として登録する決定を下します。しかし、この動きに対して、タイ国内の政治団体や市民グループが強い反発を示しました。

その後、2008年7月、タイ軍が国境を越えてカンボジアに進入し、集結を始めます。一方、カンボジアも国境地域に部隊を展開し、緊張が高まりました。10月には両軍間で銃撃戦が発生し、カンボジア側の兵士2人が死亡し、タイ側は7名が負傷するという事態に発展しました。

国際司法裁判所の介入と撤兵

2011年4月、カンボジアは国際司法裁判所に対し、プレアビヒア周辺の未画定地域の領有権についての判断を求めます。これを受けて、同年7月に国際司法裁判所は非武装地帯の設定を命じ、両国に即時撤兵を求める決定を下しました。

結果、2012年7月には両軍が対立地域から撤兵し、2013年11月にはカンボジアの提訴に基づき、国際司法裁判所が寺院周辺の土地もカンボジアに帰属すると判断しました。これにより、一時的に領有権問題は終息を迎えましたが、両国の関係は依然として複雑な状況にあります。

結論

タイとカンボジアの国境紛争は、歴史的背景、国家の利益、国際法などが絡み合う複雑な問題であり、今後も注意深く観察していく必要があります。

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