タイタンI (ミサイル)

タイタンI (Titan I)

概要

タイタンIはアメリカ合衆国によって開発された最初の多段式大陸間弾道ミサイル（ICBM）であり、アメリカ空軍での運用が行われました。アトラスと並ぶ初期のICBMであり、後に衛星打ち上げ用のタイタンロケットシリーズとして発展しました。

開発の経緯

タイタンIの開発は、アトラス・ミサイルとの並行で行われました。1955年1月に開発が始まり、当初は爆撃機系のXB-68として知られましたが、後にSM-68、最終的にはHGM-25Aという名称に変更されました。このミサイルは、アトラスの失敗時の代替機として、またより大型で長射程のミサイルを目指して設計されました。

グレン・L・マーティン・カンパニー（1957年にマーティン社に改名）によって製造されたタイタンIは、液体燃料ロケットエンジンを使った二段式設計が特徴で、ペイロードの打ち上げ能力を高めることを目指していました。具体的には、推進剤として液体酸素とケロシン（RP-1）を使用しており、他のタイタンシリーズは常温貯蔵が可能な推進剤を採用しています。発射時は、地下貯蔵タンクからの燃料と液体酸素が注入されます。

第1段は300,000ポンド（1,330 kN）の推力を生成し、第2段は80,000ポンド（356 kN）の推力を出す設計で、射程能力もアトラスを超えていました。しかし、追尾と誘導のためには無線誘導が必要で、同時に発射できるのは一基のみでした。また、サイロ方式で配備されたのはタイタンIが初めてで、地下に格納され発射直前に地上に移動して発射される仕組みになっています。

技術的特性

タイタンIは単弾頭ミサイルで、Mk.4再突入体にW38核弾頭を搭載しています。開発当初は慣性誘導システムがなく、発射後は外部からの誘導に頼る設計でしたが、後のアトラスEミサイルから慣性誘導が導入されました。これにより、発射後の自立的な誘導が可能になります。

タイタンIは、初の真の多段式（2段式）の設計だったという点でも注目されます。アトラスは全エンジン点火を行うのに対し、タイタンIは第1段を切り離した後に第2段のエンジンを点火する革新がありました。

運用と配備

1962年からタイタンIはアメリカ本土中西部から西部のいくつかの空軍基地で配備され、合計で6個の戦略ミサイル中隊が運用しました。各中隊は9基のミサイルを持ち、そのうち3基が即応状態に置かれていました。しかし、保管と発射の手順が手間のかかるものであったため、1965年にはタイタンIIやミニットマンIなど、より即応性に優れたミサイルに置き換えられ、退役しました。

配備部隊

• - 第568戦略ミサイル中隊（ラーソン空軍基地）
• - 第569戦略ミサイル中隊（マウンテンホーム空軍基地）
• - 第724戦略ミサイル中隊（ローリー空軍基地）
• - 第725戦略ミサイル中隊（ローリー空軍基地）
• - 第850戦略ミサイル中隊（エルスワース空軍基地）
• - 第851戦略ミサイル中隊（ビール空軍基地）

要目

• - 全長：31m
• - 重量：105.14t
• - ペイロード：1.8t
• - 射程：10,140km
• - 一段目：

- 全長：16.0m
- 胴体直径：3.1m
- エンジン：アエロジェット LR-87-3 ロケットエンジン2基
- 噴射時間：138秒

• - 二段目：

- 全長：9.8m
- 胴体直径：2.3m
- エンジン：アエロジェット LR-87-3 ロケットエンジン1基
- 噴射時間：225秒

タイタンIは、アメリカのミサイル開発史で重要な役割を果たしたデバイスであり、その技術革新は後のICBMや宇宙ロケットの基盤となりました。

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