タイプ (分類学)

タイプの定義と役割

生物の分類学において「タイプ」という用語は、新種記載の際に重要な役割を果たします。タイプとは、ある生物種を定義する際に基準となる標本や図解のことを指し、模式標本やタイプ標本とも呼ばれます。原核生物の場合、純粋培養された菌株がタイプとして認められ、これは基準株とも呼ばれます。さらに、科学の名称体系において、分類群の代表となる種や属が指定され、タイプ属やタイプ種として知られています。

本記事では、タイプの中でも特にタイプ標本について詳しく解説し、関連する命名規約を紹介します。タイピングの詳細な定義は、各生物が属する分類群の命名規約に従っており、動物に対しては国際動物命名規約（ICZN）が、植物や菌類に対しては国際植物命名規約（ICN）が、原核生物には国際原核生物命名規約（ICNP）が適用されます。

タイプの概説

タイプは、新種の記載にあたり、記載の拠り所となることが重要です。そのため、典型的な特徴を持つものである必要はなく、動物の歯一本や植物の葉一枚でもタイプとして認められます。また、タイプは基本的に一つの標本または図解である必要があり、同時に採集されたものや混合物であってはいけません。標本が分解されている場合も、一つの容器に収められ、その由来が明確であれば問題ありません。

生物の標本は通常タイプとして指定されますが、場合によって図解でも受け入れられます。その際には、図解の元データを保持することが重要です。原核生物の場合には、生菌株がタイプとされ、適切な保存機関に寄託されます。

タイプの種類

タイプは、原記載中での扱われ方によっていくつかの種類に分かれます。ICZNでは、ホロタイプ、レクトタイプ、シンタイプ、ネオタイプの四種類が学名の定義に直接関与する「担名タイプ」として定義されています。

• - ホロタイプ（holotype）: 原記載で指定された唯一の標本。
• - レクトタイプ（lectotype）: ホロタイプが指定されなかった場合や行方不明の場合に新たに選定された標本。
• - シンタイプ（syntype）: ホロタイプが指定されなかった場合に論文中で引用された全標本。
• - ネオタイプ（neotype）: 原記載の全ての資料が行方不明な場合に新たに作成された標本。

これらの他にも、元記載を基にした追加の基準標本が分類学の実践において活用されています。

タイプの役割

新種を発表する際には、タイプを指定し、それに基づいて種の特徴と他種との違いを説明する論文が作成されます。生物の同定は、通常、ホロタイプと照らし合わせて行われますが、現実にはホロタイプは唯一無二であることが多いため、直接比較による同定作業は現実的ではありません。このため、分類学者は原記載に基づく資料を参照し、他の情報源と比較しながら同定を行っています。

一方、原核生物の場合は、ホロタイプを培養して得た細胞が同等のものと見なされるため、微生物株保存機関から株の分譲を受けることで直接比較が可能になります。

タイプの寄託・保管

動植物のタイプは、特にホロタイプに関してはハーバリウムや博物館に保管され、信頼性高く管理されることが求められます。これらの機関は標本の保存において重要な役割を果たしており、タイプ標本が個人管理の下で粗雑に扱われることは避けるべきです。特に、日本ではそのような伝統が育まれていないため、標本の取り扱いに問題が生じているケースがあります。

一方、原核生物は適切な保存機関に寄託することが義務付けられています。これにより、研究者は世界中の保存機関からホロタイプのクローンを入手し、研究に利用できるようになっています。このように、タイプの標本管理は、生物の分類学の発展に向けた重要な課題となっています。

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