タクバヤ

タクバヤ: メキシコシティの歴史と変貌

タクバヤ（Tacubaya）は、メキシコシティの西部、ミゲル・イダルゴ区に存在する地区です。この地域は、行政上のタクバヤ地区を中心に、周囲のサン・ミゲル・チャプルテペク、オブセルバトリオ、ダニエル・ガルサ、アンプリアシオン・ダニエル・ガルサ地区を含む広がりを持っています。タクバヤは、紀元前5世紀から人々が住んでいた場所であり、ナワトル語で「Atlacuihuayan」と呼ばれていました。ここは、植民地時代から20世紀初期にかけて周辺地域とは異なる田園地帯として認識されており、大富豪たちがその景観を楽しむための邸宅を構えました。

歴史的変遷と都市化

19世紀後半からは都市化が始まり、この地区は急速に変化しました。しかし、都市化に伴い劣化が進行し、多くの貧困層が集まる場所へと変貌しました。かつてはエリートたちが居住していた豪華な邸宅群が今では貧民街と化し、段ボールで作られた仮小屋が立ち並ぶ環境になっています。特に印象的なのは、19世紀に建設された邸宅のいくつかが今なお存在する一方で、地域の交通網も発展し、地下鉄やメトロバスが接続する重要な交通拠点となったことです。タクバヤは、2011年にメキシコシティの「バリオ・マヒコ」（魔法の地区）の一つに指定され、その歴史と地域社会への注目度が高まりました。

ランドマークと文化的アイコン

タクバヤには、歴史的なランドマークが点在しています。例えば、アラメダ・タクバヤ公園は、かつて政治家や知識人によって囲まれた美しい庭園だったものの、現在は劣化が進み、居住者や不法投棄されたゴミに囲まれています。公園の中央に位置するオベリスクは、レフォルマ戦争の殉死者を讃えるものであり、当時の繁栄を思い起こさせる貴重な記念碑となっています。また、ラ・カンデラリア教会は、1590年に建設された唯一のドミニコ会修道院の遺構で、地域の宗教文化の証ともなっています。

ルイス・バラガン邸もこの地にあります。バラガンはメキシコの建築界に多大な影響を与えた建築家で、その邸宅は1994年に一般公開され、個性豊かなデザインと自然との調和を実現する空間が評価されています。これらのランドマークは、タクバヤの文化的な魅力と歴史を象徴する存在として広く知られています。

現代の社会像

一方で、タクバヤにはシウダー・ペルディーダと呼ばれる地区も存在し、そこには段ボールや木材を用いた仮小屋が並び、貧困層が生活しています。1980年代には麻薬問題も深刻化し、現在は麻薬取引の中心地として知られています。このような状況の中、政府は2020年に新住宅提供の計画を発表し、この貧困地域への支援を試みています。

交通面では、タクバヤ駅がメキシコシティ地下鉄とメトロバスの接続地点として存在し、ハリスコ通り沿いには多くの路線が集まっているため、重要な交通ハブの役割を果たしています。しかし、露天商の問題や交通渋滞など、地域内の混雑も深刻化しています。

タクバヤは、数世代にわたる人々の営みと歴史的な変遷が詰まった街であり、その魅力や課題の両方を抱えた地域です。これからも、地域の再生と共に新たな一歩を踏み出すことが期待されます。

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