タンクマール

タンクマールの生涯：出自、反乱、そして死

タンクマールは、9世紀から10世紀にかけてのドイツに生きた人物で、ドイツ王ハインリヒ1世と、最初の妻ハーテブルクの間に生まれた長子でした。しかし、彼の人生は、両親の結婚の無効という複雑な事情に翻弄されることになります。

出自を巡る問題

ハインリヒ1世は、ハーテブルクとの結婚を通して領地を得ましたが、ハーテブルクはハインリヒ1世と結婚する以前に寡婦であり、修道院に入っていました。彼女がハインリヒ1世と結婚するために修道院を出たことが問題となり、結婚は後に無効とされました。このため、タンクマールが嫡出子であるかどうかが議論の的となりました。ハインリヒ1世は、ハーテブルクとの結婚で得た領地をタンクマールに与えることを約束し、保持し続けました。この約束された領地が、後にタンクマールの反乱の火種となります。

王位継承争いとメルゼブルク伯位

929年、ハインリヒ1世は後継者に関する準備を行い、エアフルトの議会で承認を得ようとしました。ハインリヒ1世の死後、領土と遺産は4人の息子、タンクマール、オットー、ハインリヒ、ブルーノの間で分割されることになりましたが、最終的にはオットーが父の後を継いで王位に就きました。王位継承の候補者として名前が挙がったのはオットーとハインリヒのみで、ハインリヒはオットーの戴冠式の間、ザクセンに留め置かれていました。

937年、メルゼブルク伯ジークフリートが亡くなると、タンクマールは母親の遺産であるメルゼブルクの伯位を主張しました。しかし、オットー1世はジークフリートの弟であるゲロをメルゼブルク伯に任命します。この決定に不満を抱いたタンクマールは、フランケン大公エーバーハルトやヘルマン・ビルングの兄ヴィヒマン1世らと共に、オットー1世に対して反旗を翻しました。

エレスブルクでの最期

反乱軍の一員となったタンクマールでしたが、最終的にエレスブルクで包囲されることになります。彼は聖ペテロ教会に逃げ込みましたが、祭壇近くの窓から侵入してきた兵士によって殺害されました。この兵士はマインキアという名前で、窓の外から槍でタンクマールを突き刺したと伝えられています。

タンクマールの生涯は、王位継承や領地を巡る争い、そしてそれらに翻弄された人々の姿を浮き彫りにしています。彼の反乱は失敗に終わり、志半ばで命を落としましたが、その短い生涯は、当時の政治情勢や社会構造を理解する上で重要な要素となっています。

参考文献
Reuter, Timothy. Germany in the Early Middle Ages 800–1056. New York: Longman, 1991.
Bernhardt, John W. Itinerant Kingship and Royal Monasteries in Early Medieval Germany, c. 936-1075. Cambridge: Cambridge University Press, 1993.
Leyser, K.J. Medieval Germany and Its Neighbours 900-1250. The Hambledon Press, 1982.
瀬原義生 『ドイツ中世前期の歴史像』 文理閣、2012年
コルヴァイのヴィドゥキント、三佐川亮宏 訳 『ザクセン人の事績』 知泉書館、2017年

関連項目
リウドルフィング家

もう一度検索