タンジェリン (映画)

映画『タンジェリン』解説

『タンジェリン』（原題：Tangerine）は、2015年に公開されたアメリカ映画です。ロサンゼルスの下町を舞台に、社会の片隅で生きる性的マイノリティの人々を、コミカルかつ温かい視線で描いています。トランスジェンダーの娼婦という難しい役どころに、実際にトランスジェンダーであるキタナ・キキ・ロドリゲスとマイヤ・テイラーという、演技経験のない2人の女優を起用したことが大きな話題となりました。

ストーリー

物語はクリスマスイブのハリウッド、寂れたドーナツショップから始まります。トランスジェンダーの娼婦であるシンディ・レラ（キタナ・キキ・ロドリゲス）は、友人である同じくトランスジェンダーの娼婦、アレクサンドラ（マイヤ・テイラー）から、恋人のチェスター（ジェームズ・ランソン）が他の女性と浮気しているという衝撃的な事実を聞かされます。激昂したシンディは、チェスターとその浮気相手を探し求めて街を駆け巡ります。

一方、歌手になることを夢見るアレクサンドラは、夜にカフェで行われるライブのフライヤーを配りながら、客引きをしています。しかし、車で行為に及ぼうとした男が金を払わないと言い出し、トラブルになります。また、アルメニアからの移民であるタクシードライバーのラズミック（カレン・カラグリアン）は、街で娼婦を拾いますが、相手が女性と分かると車から追い出してしまいます。その後、アレクサンドラと出会ったラズミックは、彼女に車の中でフェラチオをしてもらいます。

それぞれ問題を抱えながらも、シンディ、アレクサンドラ、ラズミックの3人は、街で様々な騒動を巻き起こしながら、互いに支え合い、力強く生きていく姿が描かれています。

製作の背景

本作は、低予算で製作されたインディペンデント映画であり、撮影にはアナモレンズを装着した3台のiPhone 5sが使用されました。全編iPhoneで撮影されたとは思えないほどの映像美と、斬新な映像表現が評価され、多くの映画ファンを魅了しました。

受賞歴

第25回ゴッサム・インディペンデント映画賞：観客賞
第25回ゴッサム・インディペンデント映画賞：ブレイクスルー演技賞 (マイヤ・テイラー)
第31回インディペンデント・スピリット賞：最優秀助演女優賞 (マイヤ・テイラー)
2015年サンフランシスコ映画批評家協会賞：最優秀助演女優賞 (マイヤ・テイラー)

キャスト

シンディ・レラ：キタナ・キキ・ロドリゲス
アレクサンドラ：マイヤ・テイラー
ラズミック：カレン・カラグリアン
チェスター：ジェームズ・ランソン
ダイナ：ミッキー・オヘイガン
アシュケン：アラ・トゥマニアン

『タンジェリン』は、従来の映画の常識を覆す斬新な手法と、社会のマイノリティに対する温かい眼差しが込められた、感動的な作品です。

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