ダッカムス

ダッカムス：英国が誇るオイルブランドの栄光と復活

1899年、科学者アレキサンダー・ダッカムによってロンドンで設立されたDuckhamsは、カストロールと並ぶ英国を代表する老舗オイルメーカーとして知られていました。第二次世界大戦後、社名はDuckham'sからDuckhamsへと変更されました。長年にわたり高品質なオイルを提供し、カストロールに次ぐ規模を誇るオイルブレンダーとしてイギリス市場で確固たる地位を築きました。

BP買収とブランドの変遷

1970年、Duckhamsは石油メジャーのブリティッシュ・ペトロリアム（現BP）に買収されました。これにより、日本ではBPブランドの輸入販売を行うペトロルブ・インターナショナル（現ビーピーカストロール）がDuckhamsの取り扱いを開始、子会社であるユーロオイル・ジャパン（現ビーピー・ルブリカンツ）が輸入・製造・販売を担当することとなります。大同自動車興業（現SPK）も輸入販売に関与しており、現在でもSPKは自社製エンジンオイルにDuckhamsを彷彿とさせる高粘度モデルをラインナップしています。

1970年代には、F1チーム・ロータスへのスポンサーシップなど、モータースポーツへの積極的な関与を通じてブランド認知度を高めていきました。一時期はBPの主要ブランドの一つとして位置づけられましたが、2009年、BPはブランドをBPとCastrolに集約する戦略を採り、グローバルブランドとしてのDuckhamsは廃止されました。しかし、イギリス、アイルランド、マレーシアなど一部地域では販売が継続され、タイでは現在も販売されているようです。日本市場においても2009年に販売終了となりました。

ダッカムスオイルの特徴

Duckhamsオイルの特徴として、伝統的な緑色が挙げられます。独特の匂いを持つオイルや、青や緑に着色されたオイルなどもラインナップされていました。国内市場では、ジムニーや旧ミニ専用のオイル、カルソニックや雑誌「ティーポ」とのコラボレーションオイルも展開。特に「ティーポ」とのコラボオイルは、部分合成油で、基油や添加剤の成分が公開されていた点が注目されました。

ブランドの再始動

100年以上の歴史と高いブランド価値を持つDuckhamsは、BPの資金難時には売却案も浮上しました。2011年2月にも売却案が発表されていましたが、2016年、英国の新興企業がブランドを取得し、2017年にDuckhamsは再始動を果たしました。再始動にあたっては、ブランドの歴史と伝統、英国ブランドとしての価値を強調した販売戦略が展開されました。初期の製品ラインナップは、クラシックカー向けのオイルに限定され、特徴的な緑色のオイルも維持されています。20W-50やシングルグレードSAE30/40といった、往年の名機Q20-50を踏襲した製品が中心でした。ギヤオイルもクラシックカー向けが中心でした。2019年からは、現代の車両にも対応する最新規格オイルのラインナップも開始されました。

歴史：BP買収までの軌跡

1899年: アレキサンダー・ダッカムがFleming's Oilを退社し、Duckhams創業。
1904年: 合同会社化
1920年: 株式公開
1922年: エンジンのカーボンデポジットを大幅に低減する新プロセスオイルを開発。モーリスなど多くの英国自動車メーカーから推奨されました。
1932年: 防錆剤Adcoidsを発売。
1945年: アレキサンダー・ダッカム死去。息子のジャックが事業を引き継ぐ。
1950年代: ヨーロッパ初のマルチグレードオイルQ5500（10W-30）を発売。その後、Q20-50（20W-50）を発売し、ミニの普及によって売上を伸ばしました。ミニのミッションオイル兼用という特性から、Q20-50は必須アイテムとなり、英国で最も販売量の多いオイルとなりました。
1969/1970年: BPに買収される。

Duckhamsは、その歴史と伝統、そして技術革新を象徴するオイルブランドとして、これからもその名を語り継がれていくことでしょう。

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