ダニエル・デフォー

ダニエル・デフォー：波乱万丈の生涯と不朽の名作『ロビンソン・クルーソー』

ダニエル・デフォー (1660年-1731年) は、イギリスを代表する小説家であり、ジャーナリストです。彼の名は、冒険小説の金字塔『ロビンソン・クルーソー』によって世界中に知れ渡っています。しかし、デフォーの生涯は、単なる作家人生という枠には収まりきらないほど、波乱に満ちたものでした。

ロンドンで生まれた商業活動家

ロンドンで生まれたデフォーは、本名ダニエル・フォー。父親はろうそく製造業を営んでおり、非国教会派の信仰を持っていました。デフォーの少年時代は、1665年のペスト大流行と、翌年のロンドン大火という、歴史的な災厄に見舞われた時代でした。これらの出来事が、彼の後の著作に影響を与えたことは想像に難くありません。

作家となる以前は、商業活動に携わっていました。巨万の富を築いた時期もあれば、破産を経験した時期もありました。その人生の浮き沈みは、『ロビンソン・クルーソー』の主人公クルーソーの冒険と重なる部分もあり、彼の創作活動に強い影響を与えたと考えられます。

後に、彼は「フォー」という名字に「De」をつけて「デフォー」というペンネームを使用するようになりました。「フォー」には「敵」「反対者」といった負の意味合いがあったためだとされています。ペンネームを決めるまでには、「ダン・フォー」や「ダン・デ・フォー」など、幾つかの変遷を経ています。

ジャーナリスト、政治活動家としてのデフォー

デフォーは、才能あふれるパンフレット作家、ジャーナリストとしても知られていました。17世紀末から18世紀初頭にかけて、イギリスでは英語による小説が発展し始めた時代でした。デフォーは、この小説発展の先駆者の一人として、重要な役割を果たしています。

政治活動にも積極的に関与しました。1685年のモンマス公の反乱に参加したのち、1688年の名誉革命ではウィリアム3世とメアリー2世の即位を歓迎しました。1690年代には、ウィリアム3世を支持する政治論文を多数発表しました。その一方、アン女王即位後の1703年、政治的なパンフレットを作成したことで逮捕され、さらし台にさらされるという屈辱を味わっています。これは、非国教徒への弾圧を痛烈に批判したパンフレット『非国教徒撲滅策』が原因でした。しかし、皮肉にも、さらし台で観衆から花と飲み物を贈られるという出来事が起こり、トーリー党の有力者ロバート・ハーレーの目に留まり、釈放されることになります。

ハーレーの庇護下で、週刊誌『レヴュー』を発行し、事実上の政府広報官として活動しました。また、アン女王の諜報活動にも関与し、偽名を使ってスコットランドに潜入、匿名で政治宣伝文書を作成するなど、その活動は多岐に渡りました。スコットランドとの合邦にも尽力し、1707年の合同法成立に貢献しました。

ハーレーとの関係は、アン女王の後継者問題で複雑化し、デフォーは1713年に逮捕され、『レヴュー』は廃刊となります。しかし、再びハーレーによって釈放され、アン女王の死後も、ホイッグ党政権下で秘密裏に活動しながら、作家活動を続けました。

不朽の名作『ロビンソン・クルーソー』

59歳にして発表された『ロビンソン・クルーソー』は、空前の大成功を収めます。この作品は、無人島でのサバイバルを描いた冒険小説として、世界中で愛読されています。その後も、『海賊シングルトン』『モル・フランダーズ』『ペスト』など数々の作品を発表し、多大な影響を与え続けました。1731年、71歳でロンドンで亡くなりました。

デフォーの多様な作品群

デフォーの作品は、『ロビンソン・クルーソー』以外にも、多様なジャンルにまたがっています。社会問題を鋭く描いたものから、冒険小説、自伝小説、さらには疫病流行の記録など、その多様性には驚かされます。

彼の作品は、単なるエンターテイメント作品としてだけでなく、18世紀の社会状況や人々の生活、思想を理解する上で貴重な資料となっています。現代においても、その魅力は色あせることなく、世界中の人々に読まれ続けています。

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