ダニッシュ・ギャンビット

ダニッシュ・ギャンビット

ダニッシュ・ギャンビットは、チェスの序盤における主要なオープニングの一つで、1. e4 e5 に対して白がポーンを惜しみなく提供することでゲームを有利に進めようとする戦法です。具体的には、2. d4 とポーンを前に出し、続いて 3. c3 とさらにポーンを差し出す形で進行します。白はこうして駒の物質的な不利を一時的に受け入れますが、その見返りとして自陣の駒を非常に迅速に展開し、相手のキング側やセンターへの攻撃機会を作り出すことを狙います。ダイナミックで攻撃的なゲームを好むプレイヤーに選ばれる傾向があります。

基本形

ダニッシュ・ギャンビットの基本となる局面は、初手から以下の手順で出現します。

1. e4 e5
2. d4 exd4
3. c3

ここで黒が3. ... dxc3 と応じ、白が提供した2つ目のポーンも獲得した状態が、典型的なダニッシュ・ギャンビットのスタート地点となります。このオープニングは、1. e4 e5 2. d4 で始まるセンター・ゲームの一派生とみなされることもありますが、その独自の戦略と豊富な変化から、独立したオープニングとして詳細に研究され、扱われることが一般的です。

主な変化と戦略

基本形 1. e4 e5 2. d4 exd4 3. c3 に対し、黒が白の意図を受け入れて 3. ... dxc3 とポーンを連続して取得する変化が最も頻繁に現れます。この後、白の主要な継続手は 4. Bc4 で、クイーン側のビショップを素早く展開し、キング側への圧力をかけ始めます。黒がここでもポーンを取り続ける場合、4. ... cxb2 と応じ、白は 5. Bxb2 とビショップで取り返します。これで白はc3とb2の二つのポーンを犠牲にしましたが、両ビショップを理想的なマスに展開し、キング側への攻撃準備を整えました。

この局面で黒は 5. ... d5 とセンターに反撃するのが有力な選択肢の一つです。白は 6. Bxd5 とビショップでポーンを取り返し、これにより一時的に物質的な劣勢が緩和されます。この後の黒の自然な展開は 6. ... Nf6 です。白は 7. Bxf7+ とポーンを犠牲にして黒キングを攻撃する手順がメインラインとされており、これに 7. ... Kxf7 8. Qxd8 Bb4+ 9. Qd2 Bxd2+ 10. Nxd2 c5 と続くと、最終的に形勢は互角に近いと評価されています。

白の4手目としては、4. Bc4 の代わりに 4. Nxc3 と黒のc3ポーンを取り返す手も選択肢として存在します。

また、黒の5手目 5. Bxb2 に対する応答として、5. ... d5 以外の選択肢も考えられます。例えば、5. ... Nf6 もポーンを保持しつつ駒を展開する手です。一方、5. ... d6 とポーンを前に出す手は、キング側ビショップ（f8のビショップ）の活動範囲を限定してしまうため、あまり推奨されません。

白が6手目で 6. Bxd5 とビショップで取り返すのではなく、例えば 6. exd5 のようにポーンでセンターを固めようとした場合、c4に展開した白のビショップの働きが弱くなる可能性があります。

また、白が7手目で 7. Bxf7+ のように積極的にキングを攻める代わりに、7. Nc3 のようにナイトを展開する手を選ぶこともあります。この場合、ゲームは例えば 7. ... Be7 8. Qb3 0-0 9. 0-0-0 Nbd7 のように比較的ゆっくりとしたペースで展開することが多いです。

ダニッシュ・ギャンビットは、白が序盤の物質的優位を放棄する代わりに、駒の活動性、素早い展開、そして攻撃のイニシアチブを獲得することを目指すオープニングです。リスクを伴いますが、成功すれば相手を一方的に攻め立てることが可能な、非常にエキサイティングな戦法と言えると言えます。

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