ダニー・ロペス

ダニー・ロペス

ユタ州フォート・デュシェンに生を受けたダニー・ロペス（Danny Lopez、1952年7月6日 - ）は、アメリカ合衆国を代表する元プロボクサーである。WBC世界フェザー級の元王者として知られ、破壊力のある右を主武器とするアグレッシブなファイターだった。この王座を8度にわたり守り抜き、そのうち7度はノックアウトによる決着だったことは、彼のパンチ力の凄まじさを物語っている。実兄のアーニー・ロペスもまた、ウェルター級の強豪として知られたプロボクサーである。

彼の血筋はネイティブ・アメリカンやメキシコ系など多様であり、特に「リトル・レッド」という愛称はアイルランド系の血を引いていることに由来すると考えられている。自身の愛称にちなみ、インディアンが権威の象徴として用いるとされる赤色のウォーボネット（羽飾り）を愛用する姿は、彼のトレードマークとなった。

波乱の幼少期

ダニー・ロペスは、必ずしも順風満帆な幼少期を過ごしたわけではない。5歳の時に元ボクサーだった父を亡くし、7人いた兄弟は離れ離れになるという恵まれない時期を過ごした。一時は銃の発砲事件に関与し、少年院に入っていた経験もあるという。しかし、リング上で活躍する兄アーニーの姿に刺激を受け、自らもボクシングの道へ進むことを決意する。

ボクシングキャリアの始まり

1971年、プロボクサーとしてキャリアをスタートさせたロペスは、技巧派とは言えないものの、173cmの長身を生かした破壊的な右ストレートと、その返しとなる左フックを最大の武器とした。デビュー以来、驚異的な強さを見せ、23連勝（うち21連続KO）という記録を打ち立て、その存在を知らしめた。

スランプからの復活

しかし、快進撃の最中、後世に名を残す強敵たちとの対戦で壁にぶつかる。ボビー・チャコン（後に世界王者となる）や日本の強敵シゲ福山に敗れるなど、一時的な不調（スランプ）を経験する。だが、ロペスは諦めなかった。元世界バンタム級王者のチューチョ・カスティーヨ、「怪物」と称されたルーベン・オリバレス、そしてショーン・オグラディといった名だたる強敵たちを次々と撃破し、見事に復活を遂げた。

世界王座獲得と絶対王者としての時代

復活の勢いに乗り、1976年11月6日、デビッド・コティが保持するWBC世界フェザー級王座に挑戦。この試合には判定で勝利し、自身初の世界王座を獲得した。

世界王者となってからのロペスは、圧倒的な強さを見せつけた。ホセ・トーレスやマイク・アヤラといった実力者たちを挑戦者に迎え、実に8度もベルトを守り抜いた。特に、そのうち7度がノックアウトによる決着だったことは、改めて彼のパンチ力の凄まじさを物語っている。多くの相手が、ロペスの強打の前にキャンバスに沈んだ。

王座陥落、そして引退へ

しかし、絶対王者にも終わりは訪れる。1980年2月2日に行われた9度目の防衛戦で、メキシコの新星サルバドル・サンチェスと対戦。後の伝説となるサンチェスの卓越したボクシングテクニックの前に為す術なく、「アウトボックスされる」形で試合が進み、13回TKO負けを喫し、王座から転落した。

同年6月21日、再びサンチェスと相まみえたが、初戦と同様に相手の巧さに苦戦。14回TKOで返り討ちに遭い、この敗北を機に一度は現役引退を表明した。

短い復帰と栄光の殿堂入り

12年の時を経て、1992年2月27日に突如現役復帰を果たす。しかし、39歳という年齢による衰えは否めず、復帰戦でホルヘ・ロドリゲスに2回KOで敗れ、短い復帰ロードは幕を閉じた。

リングを離れてからも、ダニー・ロペスの功績は語り継がれた。そして長年の功績が認められ、2009年12月8日、ついに国際ボクシング名誉の殿堂入りを果たした。波乱の人生を送りながらも、強打を武器にフェザー級の頂点を極めた「リトル・レッド」は、ボクシング史にその名を刻んでいる。

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