ダブルチーム

ダブルチームとは、スポーツ競技において用いられる戦術の一つを指す言葉です。

この用語は、主にバスケットボールやプロレスなどの競技で耳にすることがありますが、それぞれの競技によって具体的に意味するところは異なります。

バスケットボールにおけるダブルチーム

バスケットボールにおいてダブルチームとは、相手チームの一人のオフェンスプレイヤーに対し、ディフェンス側の二人のプレイヤーが同時に守りにつく戦術のことを指します。

目的
この戦術の最大の目的は、相手チームの中でも特に優れた得点能力やボールハンドリングスキルを持つエースプレイヤーの動きを封じ込めることにあります。一人では止めにくい強力なプレイヤーに対して二人でプレッシャーをかけることで、シュートやパスを防いだり、ターンオーバー（攻守交代）を誘発したりする効果が期待されます。相手チームの攻撃の起点となる選手を孤立させることで、チーム全体のオフェンスリズムを崩し、試合の主導権を握ろうとする意図があります。

リスク
しかし、ダブルチームは非常にリスクの高い戦術でもあります。特定のプレイヤーに二人を割くということは、コート上の他のエリアにおけるディフェンスが手薄になることを意味します。ディフェンス側は合計5人のプレイヤーで相手の5人のオフェンスプレイヤーを守っていますが、ダブルチームを仕掛けると、残りの3人のディフェンスプレイヤーが、ダブルチームを受けていない相手の4人のオフェンスプレイヤーを守らなければならない状況が生じます。特に、残りのディフェンスプレイヤーがそれぞれマンツーマンで守っている場合、ディフェンスプレイヤー3人に対してオフェンスプレイヤー4人という状況では、必ずオフェンスプレイヤーのうち一人が全くマークされていない、いわゆる「フリー」の状態になってしまいます。ダブルチームされたプレイヤーがこのフリーの味方プレイヤーにパスを通すと、相手に容易なシュートチャンスを与えてしまう可能性が高くなります。

したがって、ダブルチームを用いる際には、その後のディフェンスのローテーション（カバーリング）が極めて重要となります。他のディフェンスプレイヤーが素早く自分のマークを離れて、フリーになった相手プレイヤーを守りにいったり、あるいはゾーンディフェンスのように連携してスペースを埋めたりする能力が求められます。いつ、誰に、どのようにダブルチームを仕掛けるか、そしてその後のディフェンスをどう立て直すかは、チームの戦略とプレイヤーの高い判断力に委ねられます。

関連用語
バスケットボールでは、さらに発展させて一人のオフェンスプレイヤーに3人のディフェンスプレイヤーが集中して守る戦術を「トリプルチーム」と呼ぶこともありますが、これはコート上のディフェンスがさらに広範囲にわたり手薄になるため、極めてリスクが高く、試合中に用いられることは稀です。

プロレスにおけるダブルチーム

一方、プロレスにおいては、主にタッグマッチ形式の試合で用いられる戦術を指します。タッグマッチは通常、二対二や三対三などで争われます。

プロレスにおけるダブルチームは、味方チームの二人のレスラーが協力し、相手チームの一人のレスラーに対して同時に技を仕掛けたり、連携した攻撃を行ったりすることを指します。これは、相手を短時間でKOしたり、試合の主導権を奪ったりするために用いられます。

ただし、プロレスのタッグマッチでは、リング内で戦うことができるのは各チーム一人ずつ、というルール（タッチしたパートナーと交代）が基本です。したがって、二人のレスラーが同時にリングインして一人の相手を攻撃する行為は、通常は反則とみなされます。しかし、レフェリーの目を盗んだり、反則カウントぎりぎりで攻撃を終えたりすることで、意図的にダブルチームを行い、試合の流れを引き寄せようとするケースも多く見られます。特に悪役レスラー（ヒール）が観客の反感を煽るために、露骨なダブルチームを行うことがあります。

このように、「ダブルチーム」という言葉は、スポーツの種類によってその意味合いや戦略的な重要性が大きく異なります。

関連項目：ディフェンス

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