ダラス・テキサンズ (NFL)

ダラス・テキサンズ（1952年）

ダラス・テキサンズは、1952年というわずか1シーズンのみ、ナショナル・フットボール・リーグ（NFL）に加盟していたアメリカンフットボールのプロフェッショナルチームです。その短い活動期間ながら、その後のNFLの歴史、特にボルチモア・コルツ（現インディアナポリス・コルツ）の誕生に繋がる重要な役割を果たしました。

設立とその背景

チーム設立のきっかけは、1951年のシーズン終了後に遡ります。当時、経営難に陥っていたニューヨーク・ヤンクスのNFLチームは、リーグによってその運営権が買い取られました。この権利はその後、テキサス州ダラスに拠点を置く、若い実業家たちのグループに譲渡されることが決定しました。彼らはこの権利を用いて、ダラスに新たなNFLチームを誕生させ、「ダラス・テキサンズ」と命名しました。これにより、テキサス州にとって初の主要4大プロスポーツリーグに所属するチームが誕生することとなりました。

当時、テキサス州はカレッジフットボールが非常に盛んな地域であり、NFLチームの存在は地元に馴染みやすく、大きな成功が見込めると広く期待されていました。

短命に終わったシーズン

しかし、いざ1952年のシーズンが開幕すると、期待とは裏腹に観客動員は極めて低迷しました。チームの本拠地として使用されたスタジアムは7万5千人を収容できる規模でしたが、毎試合集まる観客は1万人をわずかに超える程度に留まりました。この深刻な観客数の不振が表面化すると、チームを所有していた若い富豪グループは経営の継続を断念せざるを得なくなり、シーズン途中の残り5試合を残した時点で、チームの運営権をリーグに返還するという異例の事態となりました。

消滅と権利の継承

リーグはテキサンズを引き取った後、新たな買い手を見つけようと試みましたが、適切なスポンサーを見つけることはできませんでした。その結果、1952年シーズン終了をもってチームは一旦解散するという決定が下されました。

しかし、この解散決定からしばらく経った後、ボルチモアに拠点を置く別のグループがNFLへの新規参入を希望していることが明らかになりました。リーグは、解散したテキサンズの残存権利、特に選手の保有権をこのボルチモアのグループに譲渡することで、彼らのリーグ加入を承認しました。こうして、ボルチモアに新たなNFLチームが誕生し、「ボルチモア・コルツ」と名付けられました。この「コルツ」という名称は、1950年に解散した同名のボルチモアのチームが使用していた名前を復活させたものです。

公式記録上、ボルチモア・コルツはダラス・テキサンズとは別の拡張チームとして扱われています。しかし、テキサンズに所属していた選手の多くは、そのままボルチモア・コルツへと移籍し、新たなチームの核となりました。

ダラスのプロフットボール空白期間

ダラス・テキサンズの消滅により、ダラスは再びプロフットボールチームを失うことになりました。次にダラスにプロフットボールチームが誕生するのは、テキサンズ消滅から8年後の1960年です。この年に、NFLにダラス・カウボーイズが、そしてライバルリーグであったAFLにダラス・テキサンズ（後のカンザスシティ・チーフス）がそれぞれ設立されることになります。

ダラス・テキサンズ（1952年）は、その短い歴史の中で大きな成功を収めることはありませんでしたが、その存在と権利の継承は、その後のボルチモア・コルツという長く続くチームの誕生に繋がり、またダラスのプロフットボールの歴史における一時的な空白期間を示す出来事として記憶されています。

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