ダンサー・ウィズ・ブルーズド・ニーズ

アルバム概要

『ダンサー・ウィズ・ブルーズド・ニーズ』は、カナダ出身のシンガーソングライター姉妹、ケイト＆アンナ・マクギャリグルが1977年に発表した2枚目のスタジオ・アルバムです。前作に続き、彼女たちの独特な音楽世界が展開されており、フォークやカントリーを基調としながらも、多様な要素を取り入れた作品として知られています。このアルバムの大きな特徴の一つは、当時すでに著名であった多くのミュージシャンがゲストとしてレコーディングに参加している点にあります。

音楽性と特徴

本作に収録されている楽曲の多くには、ブルーグラスの持つ軽快かつ叙情的な響きが色濃く反映されています。バンジョーやフィドル、マンドリンといった楽器が効果的に用いられ、アルバム全体に牧歌的でアコースティックなサウンドが広がっています。また、姉妹の母語であるフランス語で歌われる楽曲が3曲含まれていることも特筆すべき点です。これらのフランス語曲は、ケベックの伝統音楽に影響を受けたような独特の哀愁と美しさを持っています。さらに、古くから伝わるトラディショナル・ナンバーを2曲収録しており、彼女たちがルーツ音楽にいかに敬意を払っているかが伺えます。

ケイトとアンナのそれぞれの作曲能力も際立っており、アルバム収録曲は彼女たちのペンによるものが中心です。タイトルトラックであるアンナ作の「Dancer with Bruised Knees」や、ケイト作の「Southern Boys」、「First Born」など、内省的でありながら力強いメッセージを持つ楽曲が並びます。フィリップ・タターシェフとの共作によるフランス語曲「Naufragée du tendre」は、異文化間のコラボレーションが生み出すユニークなサウンドを提供しています。

参加ミュージシャン

本作には、豪華なゲストミュージシャンが多数参加し、アルバムのサウンドに深みと彩りを加えています。その中には、エクスペリメンタルな音楽で知られるジョン・ケイル（オルガン、マリンバ担当）や、ブルーグラス界の伝説的存在であるビル・モンロー（クレジット上はゲストとして名前が挙げられていますが、どの曲で演奏したかは明確に示されていません）、著名なドラマーであるデイヴ・マタックス、ベーシストのパット・ドナルドソンといった面々が名を連ねています。彼らの参加は、アルバムの音楽的多様性と質の高さを保証するものと言えるでしょう。

ケイト自身はギターとピアノ、そしてボーカルを担当し、アンナはバンジョー、アコーディオン、キーボード、そしてボーカルを担当しています。姉妹それぞれの個性的なボーカルと演奏が、アルバムのサウンドの中核を成しています。

評価

音楽評論家からの評価は概ね好意的でした。例えば、著名な評論家であるロバート・クリストガウは、このアルバムについて「一部のリスナーが期待するような、ひたすらメロディックな作品ではない」としながらも、「デビュー作と比較して、さらに洗練されており、優れている」と高く評価しました。特に、彼はレコーディングにおけるスタジオ技術の質を称賛しており、サウンドプロダクションの完成度の高さが本作の魅力の一つであることを指摘しています。

収録曲

アルバムには以下の12曲が収録されています。

1. Dancer with Bruised Knees
2. Southern Boys
3. No Biscuit Blues
4. First Born
5. Blanche comme la neige
6. Perrine était servante
7. Be My Baby
8. Walking Song
9. Naufragée du tendre
10. Hommage à Grungie
11. Kitty Come Home
12. Come a Long Way

これらの楽曲は、姉妹の才能と、彼女たちを取り巻く豊かな音楽的環境が見事に結実したものであり、聴く者に深い感銘を与えます。ブルーグラス、フォーク、ケベックの伝統音楽といった多様な要素が混じり合いながらも、ケイト＆アンナ・マクギャリグルならではの一貫した世界観が保たれている点が、このアルバムを特別なものにしています。

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