ダンバー数

ダンバー数とは何か

ダンバー数とは、人が安定的な社会関係を維持できると考えられる人数の認知的な上限を指します。具体的には、互いを知り、関係性を理解している状態を維持できる人数のことです。イギリスの人類学者ロビン・ダンバーが1990年代に提唱しました。

ダンバーは、霊長類の脳の大きさと平均的な群れの大きさとの間に相関関係があることを発見。人間の脳の大きさから、安定的に維持できる関係の数は約150人程度と推定しました。これは、偶然バーで出会っても気まずくならない程度の関係と説明されます。ダンバー数を超えると、グループの団結を維持するために規則や法規が必要になると考えられています。

研究の背景

霊長類は社会的な生き物であり、社会的グルーミングを通じて集団内のメンバーと個人的な結びつきを維持しています。集団の規模は新皮質の容量によって制限されると考えられています。

ダンバーは、人間の集団の大きさを推定するために、霊長類の研究から得られた相関関係を利用しました。38種類の霊長類のデータから、人間の平均的な集団の大きさは約150人と推定。ただし、この数値には大きな誤差が含まれており、試験的なものとしています。

ダンバーは、人類学や民族誌学の文献を調査し、狩猟採集社会の集団数に関する情報を収集しました。その結果、バンド（30～50人）、文化的な血縁集団（100～200人）、部族（500～2500人）という分類ができることを示しました。村落や部族の大きさに関する調査も、この予測値と近似しています。

ダンバーは、平均150人という数字は、密集によって高い利益を得られる集団にのみ当てはまると主張しています。このような集団の団結を維持するためには、多くの時間を社会的グルーミングに費やす必要があります。また、厳しい生存圧に曝されている集団ほど、この値に近づく傾向があります。

言語は「安価な」社会的グルーミングの手段として進化し、社会的な団結を効率的に維持できるようになったと考えられています。言語がなければ、社会的なグルーミングに多くの時間を費やす必要があり、協力的な行動は困難になるでしょう。

さらなる研究

人類学者のH. Russell Bernard とPeter Killworth らは、アメリカ合衆国での調査で、ダンバー数の約2倍にあたる平均290人という推定値を見出しました。しかし、この数値はダンバー数ほど一般的には知られていません。

批判

Philip Liebermanは、30～50人規模の小規模集団においては、栄養面での制約が集団規模を制限していると指摘しています。また、人間の脳よりも小さい脳でも社会的関係を維持できることを挙げています。

社会への影響

ダンバー数は、組織論や社会心理学など、様々な分野で応用されています。例えば、企業経営においては、組織の規模を最適化するために、ダンバー数が参考にされることがあります。また、SNSの開発者は、プログラムが処理すべきソーシャルネットワークの大きさを知るために、ダンバー数に注目しています。

マルコム・グラッドウェルは著書『ティッピング・ポイント』でダンバー数を論じ、WLゴア&アソシエイツの事例を紹介しています。同社は、150人以上の従業員が一つの社屋で働くと問題が発生することを発見し、社屋の規模を150人に制限しました。

オンラインゲームやソーシャルネットワークサービスの研究においても、ダンバー数は重要な概念となっています。

まとめ

ダンバー数は、人が安定的な社会関係を維持できる人数の上限を示す興味深い概念です。組織の規模やコミュニケーションのあり方を考える上で、参考になるかもしれません。

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