ダン・カイリー (心理学者)

ダン・カイリー：大衆心理学者として名を馳せた「ピーターパン症候群」の提唱者

ダン・カイリー（1942年頃 - 1996年2月24日）は、アメリカ合衆国の心理学者です。イリノイ州の農場で育ち、アイオワ州の大学で哲学と心理学を学び、その後イリノイ大学で博士号を取得しました。

カイリーの専門は心理学、特に少年非行や親子関係、そして男女間の心理です。数々の著書を出版し、中でも1983年に発表した『ピーター・パン・シンドローム』は、アメリカだけでなく、日本やブラジルでもベストセラーとなり、大きな反響を呼びました。この本で提唱された「ピーターパン症候群」という概念は、現代でも広く知られ、多くの人の共感を呼びました。

『ピーター・パン・シンドローム』は、成熟した大人としての責任を負うことを回避し、いつまでも少年のような行動を続ける男性の心理を分析したものです。この概念は、男性の心理だけでなく、親子関係や人間関係における問題を理解する上で重要な視点を提供しました。

続く1984年には、『ウェンディ・ジレンマ』を発表。こちらは、男性に対して過剰なまでに世話を焼く女性の心理を分析し、注目を集めました。これらの著作により、カイリーは「ポップな心理学者 (pop psychologist)」としてメディアにも取り上げられ、広く一般の人々に知られるようになりました。

カイリーは、子育てに関する実践的なアドバイスを提供する著書も多く執筆しています。例えば、『しつけを考える本』、『ピーター・パン予防法』などは、子育てに悩む多くの親にとって貴重なガイドとなりました。彼の著作は、心理学的な知見を分かりやすく解説することで、専門家だけでなく、一般の人々にも理解しやすいよう配慮されている点が特徴です。

私生活では、2度の離婚と3度の結婚を経験しました。1988年には、イリノイ州シカゴからアリゾナ州ツーソンに移住し、そこで3度目の結婚をして、余生を過ごしました。

カイリーの主要な著作には、以下のものがあります。

Nobody said it would be easy: Raising responsible kids--and keeping them out of trouble: 責任感ある子供を育てるための実践的なガイド。
Keeping Parents Out of Trouble: A Modern Guide to Old-Fashioned Discipline: 古風な規律を現代的に解釈した子育てガイド。
Dr. Dan's Prescriptions: 1001 Nonmedical Hints for Solving Parenting Problems: 子育てにおける問題解決のための1001のヒント。
The Peter Pan Syndrome: Men Who Have Never Grown Up: 「ピーターパン症候群」を提唱した代表作。
The Wendy Dilemma: When Women Stop Mothering Their Men: 男性を過剰に「母性」で包み込む女性の心理を分析。
What to do when he won't change: 男性を変えられない女性へのアドバイス。
* Living Together, Feeling Alone: Healing Your Hidden Loneliness: 孤独感を抱える人々への処方箋。

他にも多くの著作があり、それらは日本語に翻訳され、日本で広く読まれています。彼の著作は、心理学的な専門知識を分かりやすく伝えることで、多くの人々の共感と理解を得てきました。ダン・カイリーは、現代社会における人間関係や心の問題を考える上で、今もなお重要な影響を与え続けている心理学者と言えるでしょう。

もう一度検索