ダヴィデとゴリアテ (カラヴァッジョ)

カラヴァッジョの『ダヴィデとゴリアテ』は、旧約聖書に登場するダヴィデとゴリアテの戦いを描いた絵画です。この作品は、カラヴァッジョの初期、フランチェスコ・マリア・デル・モンテ枢機卿の庇護下にあった時期に制作されました。現在、マドリードのプラド美術館に所蔵されています。このテーマを扱った他の2つのバージョンは、ウィーンの美術史美術館とローマのボルゲーゼ美術館にあります。

この作品では、少年ダヴィデがペリシテの巨人ゴリアテの首を持っている姿が描かれています。画面全体は暗闇に包まれていますが、ダヴィデの腕や脇腹、ゴリアテの首が切断された肩、そして首そのものが光に照らされています。ゴリアテの額には、ダヴィデが投石器で倒した際の傷跡が見られます。

美術史家ミーナ・グレゴーリによるX線調査によると、当初ゴリアテの顔は恐怖で口を開け、舌をねじ曲げ、眼球が眼窩から飛び出さんばかりの様子で描かれていたそうです。この初期のゴリアテの顔は、カラヴァッジョの他の作品である『メドゥーサ』や『ホロフェルネスの首を斬るユーディット』に登場する人物の顔と類似していました。しかし、完成した作品では、過激な表現は抑えられ、物語の焦点はゴリアテからダヴィデへと移されています。ダヴィデは顔のほとんどが影に隠れているものの、ゴリアテの髪をつかみ、その胴体にひざまずき、勝利の瞬間に集中しています。この絵画は、単なる勝利の場面ではなく、ダヴィデの非常に個人的な行為を表現していると言えるでしょう。

『ダヴィデとゴリアテ』は、制作後すぐにスペインに渡り、頻繁に模写された結果、スペインの芸術に大きな影響を与えました。カラヴァッジョのこの作品は、光と影の対比を強調した革新的な技法と、物語の深みを引き出す巧みな表現によって、今日でも多くの人々を魅了し続けています。この絵画は、カラヴァッジョの才能を示す初期の傑作であり、彼の後の作品にも通じる特徴が既に見て取れます。

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