ダヴィト・リャザーノフ

ダヴィト・ボリソヴィチ・リャザーノフの生涯

ダヴィト・ボリソヴィチ・リャザーノフ（1870年3月10日 - 1938年1月21日）は、ロシア帝国（現ウクライナ）のオデッサで生まれ、マルクス主義者、政治家、そして歴史家として活躍した人物です。彼の生涯は、19世紀後半から20世紀前半のロシアにおける革命運動と政治的激動の時代を映し出しています。

初期の革命運動への参加

15歳でナロードニキ運動に参加したことがきっかけで逮捕され、5年間の懲役刑を宣告されたことが、リャザーノフの活動家としての出発点となりました。1887年にはマルクス主義に転向し、19歳でロシア・マルクス主義者のサークルに加入。1891年には警察に再び捕らえられ、強制労働キャンプで4年間を過ごしました。これらの経験は、彼の思想形成と革命運動への強いコミットメントを培う上で重要な役割を果たしたと考えられます。

亡命とマルクス主義文献の研究

1900年にヨーロッパへ亡命したリャザーノフは、マルクス主義文献の普及に尽力します。1905年のロシア革命に参加しますが、革命が失敗に終わると再び亡命生活を余儀なくされます。この間、彼は第一インターナショナルの沿革史を執筆するなど、研究活動に力を注ぎました。また、トロツキーが主宰していた新聞「プラウダ」や「ナシェ・スロヴォ」にも寄稿し、自身の思想を発信しています。

第一次世界大戦とロシア革命

第一次世界大戦の勃発には反対し、ツィンメルヴァルト会議に参加しました。1917年のロシア二月革命を機に帰国し、臨時政府に対してソヴィエトを支持するボルシェヴィキに加入。十月革命を経てソビエト連邦が成立すると、マルクス・エンゲルス研究所の所長に就任。この研究所は、マルクスとエンゲルスの未発表原稿の収集と全集の作成を目的とし、リャザーノフの指導の下、マルクス主義研究の中心地としての地位を確立しました。

マルクス・エンゲルス研究所と粛清

研究所では、マルクスとエンゲルスの著作だけでなく、ディドロ、フォイエルバッハ、ヘーゲルなどの著作集の編集も行われました。しかし、1930年に「メンシェヴィキ・センター事件」に関連付けられ、研究所所長を解任され共産党からも除名されます。その後、赦免されてモスクワに戻りますが、1937年に「右派日和見主義のトロツキスト組織」との関連を疑われ再逮捕され、翌1938年に銃殺刑に処されました。

名誉回復と遺産

リャザーノフは1958年と1989年に名誉回復されました。彼の波乱に満ちた生涯とマルクス主義研究への貢献は、後世に大きな影響を与えています。特に、マルクス・エンゲルス研究所を通じて成し遂げた業績は、マルクス主義研究の基礎を築いたものとして高く評価されています。彼の研究と著作は、今日においても重要な資料として参照されています。

リャザーノフは、革命家、政治家、学者としての複数の顔を持ち、激動の時代を駆け抜けた人物でした。彼の生涯は、革命運動の理想と現実、そして権力闘争の悲劇を映し出す鏡とも言えるでしょう。

参考文献

リヤザノフの検索結果（国立国会図書館デジタルコレクション）
高野岩三郎とD.リャザーノフとの往復書簡(1928～1930年)（大原デジタルアーカイブス）
* Marxists’ Internet Archive David Riazanov 1870 – 1938

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