ダービー派

ダービー派（Derby Dilly）

ダービー派は、19世紀初期のイギリスにおいて、ホイッグ党から分派して形成された党派です。この派閥は、1834年のホイッグ党政権の内部分裂を背景に、当時の主要な問題であったアイルランド国教会の収入転用に反発した閣僚たちによって結成されました。彼らは徐々に保守党との接近を強め、1839年には完全に保守党に吸収されることになりました。

背景

1830年11月、チャールズ・グレイ率いるホイッグ党政権が誕生し、多くの政治改革を成功させました。しかし、政権の不統一さが影を落とし、改革派の間に不満が高まっていました。特に、1834年5月に陸軍支払長官であるジョン・ラッセル卿が提案したアイルランド国教会の収入を民間に転用する案は、内部の意見対立を引き起こす原因となりました。

ダービー派の形成

この提案により、スタンリー卿や他のホイッグ右派の閣僚たちが強く反対。グレイ伯爵は急進的な閣僚の影響で、国教会の収入を社会保障に転用することを検討し、最終的に4人の閣僚が辞職しました。この出来事をきっかけに、約80人のホイッグ庶民院議員はスタンリー卿を中心に独立会派を結成し、「ダービー派」（Derby Dilly）と呼ばれました。彼らは自らを「昔ながらのホイッグの信条を持つ者たち」と位置づけ、ホイッグ党からの分離を果たしました。

政治活動とエッセンス

ダービー派は、すぐに保守党に加わることはせず、短期間の保守党政権（第二次ウェリントン公爵内閣や第一次ピール内閣）に参加を拒否しました。1835年の解散総選挙では86議席を獲得し、議会における影響力を見せつけました。さらに、彼らはホイッグ党政権の第2次メルバーン内閣に対して野党の立場を取り、メルバーン子爵がオコンネル派に過度に接近していると批判しました。

1836年から1837年にかけて、ダービー派は保守党との接近を進め、スタンリー卿は最前列で保守党の党首ピールと席を並びました。しかし、1837年6月の解散総選挙では議席を60に減少させ、その結果、独立会派としての立場を維持するのが困難になりました。これにより、保守党との合流が急加速しました。

吸収合併へ

最終的に、スタンリー卿は1837年11月に保守党に入党し、ダービー派も1839年までに完全に保守党に吸収されました。この変遷は、19世紀のイギリスにおける政党政治の変化を象徴するものであり、今後のイギリス政治に大きな影響を与えることとなりました。

参考資料

手法や政治的背景を深く知りたい方には、君塚直隆の『イギリス二大政党制への道』や、ジョン・ジョゼフ バグリーの『ダービー伯爵の英国史』などを通じて、さらなる学びを深めることをお勧めします。

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