チェコスロヴァキア共産党

チェコスロバキア共産党

チェコスロバキア共産党（チェコスロバキアきょうさんとう、チェコ語: Komunistická strana Československa, KSČ）は、かつてチェコスロバキアに存在した共産主義政党です。1921年の結成から1989年の体制崩壊まで、特に第二次世界大戦後は、この党がチェコスロバキアの政治・社会を決定づける上で極めて重要な役割を果たしました。

設立と初期の活動

党は第一次世界大戦後のチェコスロバキア成立間もない1921年5月に設立されました。当初は社会主義運動の一派として活動していましたが、コミンテルンの指導の下、より急進的な路線を追求しました。戦間期には議会にも議席を有し、労働者階級を中心に一定の支持を得ていましたが、政権の中枢からは遠い存在でした。

第二次世界大戦後の台頭

第二次世界大戦中、党はナチス・ドイツ占領下の抵抗運動において重要な役割を果たしました。この経験と、ソ連の赤軍によるチェコスロバキアの解放への貢献を背景に、戦後の党勢は大きく拡大しました。戦後の選挙で国民戦線政府の一角を占め、ゴットワルトを首班とする政権にも参加しました。

そして1948年2月、いわゆる「二月事件」（チェコスロバキア・クーデター）を経て、党は議会制民主主義を停止し、単独で政権を掌握しました。これにより、チェコスロバキアはソ連の影響下にある社会主義国としての道を歩み始めます。

社会主義体制の確立と支配

権力を掌握したチェコスロバキア共産党は、ソ連を模範とする社会主義体制を強力に推進しました。経済は計画経済へと移行し、主要産業は国有化されました。土地改革も行われ、農業の集団化が進められました。政治的には、一党独裁体制が確立され、他の政党は形骸化されるか、共産党の指導下におかれました。

党は社会全体に対する統制を強化し、思想・言論の自由は厳しく制限されました。秘密警察（シュタージ）による監視網が張り巡らされ、反体制的な動きは容赦なく弾圧されました。この時期、党内でも粛清が行われ、多くの人々が投獄されたり、処刑されたりしました。

プラハの春とその鎮圧

1960年代に入ると、硬直化した体制に対する国民の不満が高まり、党内でも改革の機運が生まれました。1968年1月、アレクサンデル・ドゥプチェクが第一書記に就任すると、「人間の顔をした社会主義」を掲げ、検閲の緩和、経済改革、連邦制への移行など、一連の自由化・民主化改革（「プラハの春」）が始まりました。

しかし、この動きはソ連をはじめとする他の東欧諸国の共産党指導部から危険視されました。同年8月、ワルシャワ条約機構軍（主にソ連軍）がチェコスロバキアに軍事介入を行い、「プラハの春」は一方的に終結させられました。ドゥプチェクは失脚し、改革派は追放され、グスターフ・フサーク率いる保守派が権力を握りました。

「正常化」と停滞

軍事介入後の体制は「正常化」（Normalizace）と呼ばれました。これは、ソ連の指導の下、再び厳格な共産党支配を確立し、改革運動以前の状態に戻すことを意味しました。政治的な自由は再び制限され、異論を唱える者は弾圧されました。経済も停滞し、国民の間には諦めや不満が広がりました。

チェコスロバキア共産党は、ソ連の権威に依拠して体制を維持しましたが、国民からの支持は失われていきました。

ビロード革命と党の終焉

1980年代後半、ソ連のゴルバチョフが進めたペレストロイカの影響や、東欧各国での民主化運動の高まりは、チェコスロバキアにも波及しました。1989年11月、学生デモを発端とする大規模な反体制運動が起こりました。これが「ビロード革命」です。

国民の圧倒的な支持を受けた非暴力的な運動に対し、チェコスロバキア共産党は抵抗力を失い、指導部は総辞職に追い込まれました。党は一党独裁の放棄を宣言し、複数政党制への移行を認めました。1990年初頭には、党名を変更するなど存続を模索しましたが、歴史的な役割を終え、事実上解体されました。

チェコスロバキア共産党の歴史は、第二次世界大戦後の東欧における社会主義体制の成立、展開、そして崩壊という激動の時代を象徴しています。その支配は国家と国民に深い影響を残しました。

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