チップセット

チップセット：PCの中枢を担う心臓部

[パーソナルコンピュータ]の心臓部とも言えるチップセット。その役割、歴史、そして将来について詳細に解説します。

チップセットとは何か？

チップセットとは、複数の[集積回路]を組み合わせ、CPUとメモリ、周辺機器を繋ぐ役割を担う重要な部品です。PC/AT互換機|PC_AT互換機においては、CPUの外部バスとメモリや周辺機器を接続する標準バス間の橋渡し役であるバスブリッジなどの機能を統合したLSIが、チップセットと呼ばれてきました。近年は集積化が進み、単一のLSIで構成されることが一般的ですが、その呼称は現在も残っています。スマートフォンなどの組み込みシステムにおいても、複数のLSIを組み合わせたシステムをチップセットと呼ぶ場合があります。

チップセットの進化：ノースブリッジとサウスブリッジ

初期のPCでは、CPUメーカーが提供する標準的な周辺ICと複数の汎用ICを組み合わせ、制御回路を構成していました。チップセットはこの複数のICを、より高集積で少数の専用LSIに統合したものです。

1990年代には、2チップ構成が一般的でした。CPUに近い方をノースブリッジ、周辺機器とのインタフェースを担当する方をサウスブリッジと呼んでいました。ノースブリッジには、CPUインタフェース、メモリコントローラ、グラフィックインタフェース(AGPやPCI Express)などが含まれていました。サウスブリッジには、PCIスロット、ATA、USB、EthernetなどのI/O機能が搭載されていました。ノースブリッジとサウスブリッジ間は、PCIバスや専用高速バス(DMIなど)で接続されていました。

近年は、ノースブリッジの機能がCPUに統合される傾向が強まりました。インテルプラットフォームでは2010年頃より、AMDプラットフォームでは2010年代半ばから、ノースブリッジの機能はCPUに統合されるようになり、現在のPCではノースブリッジは存在しません。そのため、旧来のサウスブリッジは単にチップセットと呼ばれるようになり、PCI Expressコントローラ、SATA/NVMeコントローラ、高速USBインタフェースなどが主な機能となっています。

高速化が不要なレガシーデバイス(PS/2ポート、シリアルポートなど)は、スーパーI/Oチップと呼ばれる別のLSIが担当するようになり、チップセット本体の高速化の妨げをなくしました。

統合チップセット

ノースブリッジにグラフィックス機能を統合したチップセットを、統合チップセットと呼びます。コスト、省スペース、省電力に優れるため、ノートパソコンなどで広く採用されました。ビデオメモリはメインメモリを共有するUMAが主流でしたが、専用メモリを搭載した製品もありました。初期は単体GPUに性能が劣ることもありましたが、後発の統合チップセットは、マルチディスプレイ機能やShader Model 4.0対応など、単体GPUと遜色のない機能を持つようになりました。現在では、統合グラフィックスもCPUに統合されるのが一般的です。

主要メーカーとサードパーティーの動向

インテルやAMDなどのCPUメーカーは、自社製のチップセットを開発・供給することで、信頼性向上に貢献しています。

サードパーティーメーカーは、低価格PC市場を中心にチップセットを供給していましたが、品質や互換性問題を抱える製品も存在しました。かつては、ULi、SiS、VIAなどの台湾系メーカーが大きなシェアを占めていましたが、2000年代以降、ATI(AMDに買収)やNVIDIAなどのグラフィックス専業メーカーが参入し、サードパーティーメーカーは徐々に市場から撤退していきました。現在では、ほとんどのPCはCPUメーカー製のチップセットを採用しています。

今後の展望

チップセットは、CPUとの統合がさらに進み、より高度な機能が搭載されることが予想されます。AI処理や高速データ転送など、今後のPCの進化に不可欠な役割を担い続けるでしょう。また、省電力化や小型化も重要な課題であり、技術革新が期待されます。

まとめ

チップセットは、PCの性能や機能を決定づける重要な部品です。その歴史と進化を理解することで、PCの仕組みをより深く理解することができるでしょう。 本記事では、1980年代後半からのチップセットの変遷を概観し、その技術的進歩と市場動向を解説しました。今後、AIやIoT技術の進展に伴い、チップセットの役割はますます重要性を増していくと考えられます。

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