チャペルクロス原子力発電所

チャペルクロス原子力発電所

チャペルクロス原子力発電所は、スコットランド南西部のダンフリーズ・アンド・ガロウェイ地方、アナン近郊に位置していたマグノックス炉の原子力発電所です。この発電所は、イギリスの原子力開発初期において、兵器級プルトニウムの生産を主な目的として建設されましたが、同時に電力供給も行っていました。現在は廃炉作業が進められています。

位置

チャペルクロスは、アナンから北東に約3km離れた場所に位置しており、かつては第二次世界大戦中にRAFアナンとして使用されていた訓練飛行場の跡地、約92ヘクタールの敷地に建設されました。最寄りの集落はクレカです。

歴史

チャペルクロスは、カンブリアのコールダーホール原子力発電所の姉妹炉として建設されました。1959年に完成し、当初の目的は英国の核兵器開発のためのプルトニウム生産でした。電力生産は、その副産物と位置づけられていました。

1959年5月2日、ダンフリーズ統監サー・ジョン・クラッブによって公式に開所されました。1971年に英国核燃料会社(BNFL)が設立されるまで、英国原子力公社(UKAEA)が所有・運営を行いました。その後、2005年4月の原子力事業再編まで、BNFL傘下でコールダーホール炉と連携して運転されました。

チャペルクロスには、60MWeを発電可能な4基のマグノックス炉がありました。原子炉はUKAEAが、タービンはパーソンズ社が供給しました。2004年には、すべての資産と負債が原子力廃止措置機関(NDA)に移管されました。その後、発電所の運営は、英国原子力グループとマグノックス・エレクトリックによる2層構造モデルに移行しました。

2007年6月には、エナジーソリューションズが英国原子力グループからSMCを買収しました。2001年には、燃料取り出しを円滑に行うため、BNFLが1000万ポンドを投じて燃料経路を最新の基準にアップグレードしました。発電は2004年6月に停止されました。

原子炉

設計

原子炉の設計は、基本的にコールダーホール炉と同じで、4基の180MWt黒鉛減速二酸化炭素冷却型マグノックス炉でした。ただし、発電所のレイアウトは、4基1組として設計されたため、2基1組のコールダーホールよりもコンパクトでした。単一のタービンホールには8基のタービンが設置されており、当初は23MWでしたが、後に30MWに改良されました。原子炉の熱出力は公称265MWに改良されました。

1号炉はコールダーホール炉と同じ設計でしたが、2〜4号炉には、黒鉛の照射損傷を抑制するために原子炉用黒鉛スリーブが装着されました。また、一部の原子炉は、イギリスの核抑止力やリチウム標的材料の中性子吸収効果を相殺するために、濃縮ウラン燃料のトリチウム生産に使用されました。

施設

発電所南部には、モジュラー管理塔、4基の原子炉建屋、タービンホール、整備工場、燃料要素冷却池、トリチウム生産工場、フラスコ取扱施設がありました。北部には、ハンガーの遺構、黒鉛取扱研究所、セラフィールドの再処理で生じた劣化ウランを収納する大型ビルがありました。

液体廃水は、5kmのパイプラインを通じてソルウェー湾に排出されていました。すべての環境排出は、スコットランド環境保護庁によって規制されていました。

トリチウム生産

チャペルクロスは、1980年から2005年までポラリスやトライデントの戦略核抑止力に必要なトリチウムを生産していました。トリチウムは、リチウム標的物質を中性子照射することで生産され、トリチウムガスはチャペルクロス加工工場で抽出されました。この工場は、国防省に代わってBNFLが運営しました。生産されたトリチウムは、オルダーマストンに輸送されました。核兵器計画への関与のため、1998年まで国際保障措置の対象外でした。

経緯・事故

1967年5月 燃料被覆管融解事故が発生しました。2号炉の燃料棒が黒鉛の破片で部分的に閉塞し、過熱により被覆が破損し、原子炉の一部が汚染されました。1969年にクリーンアップが完了し、2004年2月まで運転されました。

1978年 BNFLはチャペルクロスでの重大事故により、200ポンドの罰金が科されました。

1997年6月 2号炉の熱交換器に亀裂が発見されました。製造時の欠陥で、運用中の疲労によるものではないことが判明しました。原子力規制局は、安全事例の範囲内であると判断しました。

2001年 1号炉の燃料交換作業中に、照射済みの燃料要素がグラブから外れ、作業員が放射線に被曝する事故が発生しました。この事故は、国際原子力事象尺度でレベル1に分類されました。

2001年7月 少量の劣化ウランが腐食したドラム缶から漏れ出しました。この物質は、カペンハーストに輸送され、ドラム缶が交換されました。

2001年7月 3号炉の燃料交換中に、燃料バスケットが落下し、燃料棒が破損する事故が発生しました。放射線の放出はなかったとされています。

2001年9月 照射による黒鉛減速体の収縮により、1号炉のチャージパンが設計位置から外れ、発電が停止されました。4号炉も修理されましたが、発電には復帰しませんでした。

廃炉

2005年9月26日、保健安全執行部は、チャペルクロスの廃炉計画に同意しました。2007年5月20日には、4基の冷却塔が制御解体されました。地元住民の一部は、ランドマークの消失に反対しました。しかし、英国原子力グループとNDAは、従来型の解体を優先しました。

2012年12月には、4基の原子炉のうち3基から燃料が取り出され、2013年半ばにはすべての燃料が取り出される予定でした。

関連項目

イギリスの核兵器
スコットランドの原子力
イギリスの原子力
イギリスのエネルギー政策
放射性廃棄物

外部リンク

Official site

チャペルクロス原子力発電所の場所 (該当する地図へのリンク)

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