チャーチ (靴)

チャーチ：英国を代表する老舗紳士靴ブランド

チャーチ(Church's)は、1873年、トーマス・チャーチによって英国ノーサンプトンで創業した老舗の靴ブランドです。日本では「チャーチ」の名称で広く知られていますが、正式名称は「チャーチーズ」です。創業以来、高品質な紳士靴を作り続け、世界中に多くのファンを獲得してきました。

歴史と変遷

1873年の創業以来、チャーチは英国紳士靴業界を牽引する存在として成長を遂げました。1930年代には早くもニューヨークに進出するなど、国際的な展開も積極的に行っていました。1960年代には、老舗靴メーカーであるチーニー社を買収し、傘下に収めています。

1999年には、イタリアの高級ブランドであるプラダグループに買収されました。この買収を機に、チャーチは新たなステージへ進むこととなります。プラダ傘下では、ブランドイメージの刷新を図り、よりスタイリッシュなデザインを取り入れるなど、変化が見られました。

興味深いことに、チャーチ創業家は2009年、プラダからチャーチのセカンドブランドとして展開されていたチーニー社の製造部門を買収しました。そして、創業家自らが「旧チャーチ（オールド・チャーチ）」時代の木型を再現したモデルをチーニーブランドで製作するなど、歴史と伝統への回帰も見られます。

チャーチの特徴：伝統と革新の融合

多くの英国老舗靴ブランドが取得している「英国王室御用達」の称号ですが、チャーチは申請していません。しかし、その高い品質とコストパフォーマンスから「英国の良心」と称賛されることもありました。近年は、ユーロ高や原油価格高騰、原皮の供給減少などの影響を受け、価格が高騰しているのが現状です。

チャーチの代名詞ともいえるのが、独自のガラス加工を施したアッパー素材「ブックバインダー」です。この素材を用いた定番モデルである、ストレートチップの「Consul」、バルモラルフルブローグ（内羽ウイングチップ）の「Chetwynd」、バルモラルセミブローグ（内羽メダリオンキャップトゥ）の「Diplomat」は、ブランドを代表する人気モデルであり、その高い品質と洗練されたデザインは世界中の紳士を魅了し続けています。

ラスト（木型）の変化

プラダによる買収は、チャーチのラスト（木型）にも大きな変化をもたらしました。ファッション性を重視したスタイリッシュなラストが開発され、それまでとは異なるモデルが市場に投入されました。モデル名変更なども行われ、従来の英国靴のイメージからの脱却が図られました。買収前のモデルは「旧チャーチ（オールド・チャーチ）」と呼ばれ、現在でも多くのファンに愛されています。

近年は、定番モデルについては旧チャーチ時代のラストやモデル名に戻す動きも見られます。伝統と革新のバランスを重視する姿勢が見て取れます。

ファクトリーロゴと年代判別

チャーチの紳士靴の中敷には、ファクトリーロゴとして都市名が刻印されています。この都市名によって、靴の製造年代を判別することが可能です。ロゴに刻まれた都市の数によって、新生/現行チャーチ（5都市：ロンドン、パリ、ニューヨーク、ミラノ、東京）、新生チャーチ（4都市）、旧チャーチ（3都市）、旧々チャーチ（2都市または1都市）などに分類されます。

日本市場におけるチャーチ

日本市場への進出は1965年、大塚製靴が輸入販売元として開始されました。プラダ買収前後を経て、現在は渡辺産業がディーラーとなり、全国のデパートやセレクトショップ、そしてブリティッシュメイドなどの自社店舗で販売されています。2013年には、日本国内初の旗艦店としてチャーチ表参道店がオープンしました。

チャーチは、伝統を守りつつも常に進化を続けるブランドです。これからも、世界中の紳士淑女を魅了し続けることでしょう。

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