チャールズ・ダベンポート

チャールズ・ベネディクト・ダベンポート

チャールズ・ベネディクト・ダベンポート（1866年6月1日 - 1944年2月18日）は、アメリカ合衆国の著名な動物学者であり、初期の生物統計学、そして後に優生学分野で大きな影響力を持った人物です。コネチカット州スタンフォードに生まれ、ハーバード大学で学び、1892年には生物学の博士号を取得しました。大学で動物学の専任講師を務めるなど、教育者としても活動しました。

研究キャリアの変遷

ダベンポートはキャリアの初期において、生物学的変異の定量的な解析を試みる分類学の先駆者として知られました。フランシス・ゴルトンやカール・ピアソンといった計量生物学の開拓者たちに深い敬意を払い、ピアソンが創刊した学術誌「Biometrika」の編集委員も務めるなど、この分野への貢献を目指しました。しかし、20世紀初頭にメンデルの遺伝の法則が再発見されると、彼は急速にメンデル遺伝学の支持へと傾き、その主要な推進者の一人となっていきました。

優生学研究の推進

1910年、ダベンポートはニューヨーク州にあるコールド・スプリング・ハーバー研究所（Cold Spring Harbor Laboratory）の所長に就任し、そこで優生学記録局（Eugenics Record Office）を設立しました。この組織を拠点に、彼は人類遺伝学の研究を開始し、その後の人生における主要な取り組みの多くが、優生学の理論と実践を推進することに費やされました。

主要著作と影響

彼の代表的な著作の一つである『優生学と形質遺伝の関係（Heredity in Relation to Eugenics）』は1911年に発表され、アメリカにおける優生学史上で極めて重要な位置を占めています。この書籍は長年にわたり大学の教科書として広く用いられ、当時の優生学思想の普及に大きく貢献しました。この業績が評価され、翌1912年には米国科学アカデミーの会員に選出されています。

人種に関する研究と現代の評価

ダベンポートはまた、助手の協力を得て、白人と黒人の混血に関する包括的な定量的研究を試みました。この研究の成果は、1929年に出版された『ジャマイカにおける人種混血（Race Crossing in Jamaica）』にまとめられました。この中で彼は、白人と黒人の間に生まれた子供は生物学的および文化的に劣るという統計的証拠が得られたと主張しました。しかし、この結論は提出されたデータから導かれるものとしては無理があり、当時から批判を受けていました。現代においては、この研究は科学的手法を装った人種差別、すなわち科学的人種差別（Scientific Racism）の典型例と見なされています。

ナチス・ドイツとの関連

社会学者のステファン・クール（Stefan Kühl）による詳細な調査によると、ダベンポートは第二次世界大戦の前から戦中にかけて、ナチス・ドイツの様々な研究所や出版物と関連を持っていました。例えば、彼は1935年に創刊された、当時ドイツで影響力のあった二つの学術誌の編集委員を務め、また1939年には、東ドイツにおける劣等とされた人種の隔離政策に関与した重要な人物であるオットー・レーチェ（Otto Reche）の記念論文集に寄稿するなどしています。

歴史的評価

チャールズ・ベネディクト・ダベンポートは、生物学の初期における定量的なアプローチの発展に一定の貢献をした人物ですが、そのキャリアの後半で優生学の熱心な推進者となったことは、彼の歴史的評価に大きな影響を与えています。特に、彼の行った人種に関する研究は、科学的根拠に乏しく、倫理的に深く問題があるものとして、今日では厳しい批判にさらされています。彼の活動は、科学が社会的な偏見や政治的目的のために利用される危険性を示す歴史的な事例となっています。

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