チャールズ・ライト (植物学者)

チャールズ・ライト：探検と植物学への情熱

チャールズ・ライト（Charles Wright, 1811年10月29日 - 1885年8月11日）は、19世紀のアメリカ合衆国を代表する植物学者の一人です。彼は、合衆国北太平洋調査探検（North Pacific Exploring and Surveying Expedition）に参加し、日本を含む広範な地域で植物の採集を行いました。ライトの探求心と植物学への貢献は、今日でも高く評価されています。

生い立ちと初期のキャリア

コネチカット州のウェザーズフィールドで生まれたライトは、イェール大学で古典と数学を学びました。1835年からはミシシッピ州で農園主の家族の家庭教師として働き始めますが、2年後に雇い主の事業が失敗。その後、テキサスへと移り、地質調査の測量師や教師として生計を立てました。この時期に、彼はアメリカの植物研究の中心人物であったエイサ・グレイと交流し、グレイのために植物標本を送るようになります。この活動が、彼の植物学者としてのキャリアを大きく左右しました。

テキサスとメキシコでの調査

1849年、ライトは陸軍のテキサス地域の調査に参加し、ガルベストンからサンアントニオ、エルパソにかけての地域を調査しました。1851年には、アメリカとメキシコの国境地域の調査にも参加。これらの調査で得られた成果は、エイサ・グレイによって『ライトのテキサスとメキシコの植物』としてまとめられ、1852年から1853年にかけて出版されました。この著作は、ライトの初期の業績を広く知らしめるものとなりました。

北太平洋調査探検への参加と日本での植物採集

1853年から1856年にかけて、ライトはリングゴールドとジョン・ロジャースが率いる合衆国北太平洋調査探検に植物学者として参加しました。当初、この探検の目的はアメリカと中国間の航路の調査でしたが、太平天国の乱や日本の開国といった状況の変化により、探検の焦点は日本沿岸の調査へと移ります。1854年には、小笠原諸島、沖縄、奄美諸島、そして日本の海岸で植物調査が行われ、ライトは貴重な植物標本を数多く収集しました。これらの標本の中には、シマザクラ、オガサワラボチョウジ、ウバメガシなど、後に新種として記載されたものも含まれています。

キューバでの調査

1856年2月に艦隊がサンフランシスコに到着すると、ライトは探検隊を離れ、ニカラグアを経由してキューバへと渡りました。1856年から1867年の間、彼はキューバの調査探検を率い、1859年からはドイツ系の博物学者ファン・グンドラッハと共にモンテベルデやカルデナスの周辺地域を調査しました。キューバでの調査もまた、ライトの植物学における重要な業績の一つです。

後世への影響

チャールズ・ライトの功績は、彼の名にちなんだ植物や鳥の名前にも残されています。ナス科の種である Datura wrightii や、キツネノマゴ科の属名である Carlowrightia、タイランチョウ科の鳥の種名 Empidonax wrightii などは、ライトの貢献を記念して献名されました。彼の収集した植物標本と研究は、後の植物学研究に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

参考文献

Barbara and Richard Mearns - Audubon to Xantus, The Lives of Those Commemorated in North American Bird Names ISBN 0-12-487423-1
Richard A Howard Charles Wright in Cuba, 1856-1867 ISBN 0-89887-059-3

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