チヤヴァナ

チヤヴァナ：インド神話の不老不死の聖仙

インド神話に登場するチヤヴァナは、長寿と若返りの物語で知られる聖仙です。彼は、聖仙ブリグとプローマーの子として生まれました。母プローマーをめぐる複雑な出来事や、王女スカニヤーとの出会いを経て、チヤヴァナは数奇な運命をたどり、やがて神々をも巻き込む壮大な物語の主人公となります。

波乱万丈の誕生と運命

チヤヴァナの母プローマーは、ラークシャサのプローマンに愛慕されていましたが、プローマンの父によってブリグ仙のもとへ嫁がされました。ブリグ仙の留守中、プローマンがプローマーを連れ去ろうとした際に、チヤヴァナは怒りの中で母から生まれ出ます。この出来事により、プローマンはチヤヴァナの威光によって焼死しました。これは、チヤヴァナの並外れた力と神聖さを示す象徴的な出来事と言えるでしょう。

王女との出会い、そして結婚

時は流れ、チヤヴァナは美しい湖畔で厳しい修行に励んでいました。長年の修行の末、彼は土に埋もれ、まるで塚のようになり、蟻の巣が作られるほどでした。ある日、シャリヤーティ王とその一行が湖を訪れた際、王女スカニヤーは、塚に光るものを見つけ、荊で突いてしまいました。それがチヤヴァナの目であったことから、激怒したチヤヴァナは、一行に呪いをかけて苦しめました。やむなくシャリヤーティ王は、チヤヴァナに許しを乞い、スカニヤーとの結婚を申し出ます。こうして、年老いたチヤヴァナと美しい王女スカニヤーは夫婦となりました。スカニヤーは、年老いた夫を献身的に支える良き妻となりました。

アシュヴィン双神と若返り

その後、スカニヤーはアシュヴィン双神から求愛されますが、それを断りました。アシュヴィン双神は、チヤヴァナを若返らせることを条件に、スカニヤーに夫を選ぶ機会を与えることを提案します。承諾を得て、アシュヴィン双神はチヤヴァナを泉へと導き、若返りの儀式を行いました。しかし、儀式の後、3人の姿は瓜二つとなり、スカニヤーは誰を選ぶべきか迷います。それでもスカニヤーは、見事にチヤヴァナを選びました。この選択は、スカニヤーの誠実さとチヤヴァナへの深い愛情を示しています。

神々との対立とソーマ

若返ったチヤヴァナは、アシュヴィン双神がソーマ供犠（神々の儀式における重要な要素）に参加していないことを知っていました。これは、神々の仲間として認められていないことを意味します。そこでチヤヴァナは、アシュヴィン双神への恩返しとしてソーマを与えようとします。しかし、この行為にインドラ神が激しく反発します。インドラは、アシュヴィン双神は神々ではなく労働者であるため、ソーマを受ける資格がないと主張し、ヴァジュラ（インドラの武器）で攻撃しようとします。しかし、チヤヴァナはインドラの腕を麻痺させ、さらに魔術と苦行の力で、大阿修羅マダを創造し、インドラに対抗します。インドラはマダの恐ろしさに恐れをなし、アシュヴィン双神がソーマを得て神々の仲間入りをすることを認めました。

まとめ

チヤヴァナの物語は、単なる若返りの物語にとどまりません。家族、愛、神々との対立、そして不老不死への探求といった様々なテーマが織り込まれ、インド神話の奥深さと多様性を示す、魅力的な物語です。彼の波乱万丈の人生は、神話の登場人物の中でも特に興味深い存在として、後世に語り継がれています。

もう一度検索