チュウゴクオオサンショウウオ

チュウゴクオオサンショウウオ (Andrias davidianus)

チュウゴクオオサンショウウオは、両生綱有尾目オオサンショウウオ科に属する大型の両生類です。別名としてシナハンザキ、タイリクオオサンショウウオとも呼ばれています。

分布

中国の黄河、珠江、長江水系の山岳地帯の河川に生息しています。また、人為的な移入により、日本の鴨川水系や台湾などでも生息が確認されています。

形態

全長は1メートルに達します。皮膚の表面には疣状の突起が比較的少なく、体側面の隆起も目立ちません。体色には大型の薄褐色の斑紋が入る個体が多く見られます。

同属のオオサンショウウオと比較すると、目がやや大きく、吻端が扁平な傾向があります。しかし、外見上の特徴だけではオオサンショウウオとの明確な識別は難しいとされています。

分類

かつて中国に生息するオオサンショウウオ属はチュウゴクオオサンショウウオ一種とされていましたが、近年の研究により、少なくとも5種の隠蔽種で構成されている可能性が指摘されています。2019年には、スライゴオオサンショウウオ（Andrias sligoi）が遺伝的な違いから独立種として復活し、南部個体群を独立種とする説も提唱されました。さらに2022年にはAndrias jiangxiensis、2023年にはAndrias cheniがそれぞれ新種として記載されています。

生態

標高100 - 2,000メートル（主に300 - 900メートル）の河川の上・中流域に生息します。幼体は水深の浅い場所、大型個体は水深の深い場所を好みます。夜行性で、昼間は水中の岩陰などで休息します。

食性は肉食性で、魚類、カエル、水生昆虫、甲殻類などを捕食します。幼体同士で共食いをしたり、鳥類を捕食した例も報告されています。

繁殖形態は卵生で、5 - 9月（主に7 - 9月）に水中の石の下などに、数珠状に繋がった200 - 1,500個の卵を産みます。飼育下では、卵は約1ヶ月で孵化する例があります。全長40 - 50センチメートル程度で性成熟すると考えられています。

人間との関係

中国語名の「娃娃魚（ワーワーユー）」は、捕獲時にまるで赤ん坊のような鳴き声を出すという俗説に由来します。

中国では食用や美容品として利用され、皮革も利用されています。食用としては、滋養強壮、貧血防止、月経不順などに効果があると信じられています。1960年から養殖が始まり、1970年代には飼育下繁殖に成功しました。現在は、飼育下繁殖された3世代目以降の個体のみが食用として認められています。

ワシントン条約附属書Iに掲載されており、国際的な取引が厳しく制限されています。中国国内では、国家II級重点保護野生動物として保護の対象とされ、飼育下繁殖や販売にも許可が必要です。野生個体の食用禁止、繁殖期の捕獲制限、保護区の設置、植林などの保護対策が進められています。しかし、人為的な移入による遺伝子汚染が懸念されており、遺伝的に純粋な個体群の保護が課題となっています。2022年時点では、A. jiangxiensisのみが遺伝的に純粋な個体群として野生下に存在すると考えられています。また、A. sligoiは野生下では絶滅したと考えられています。

日本では、賀茂川水系で発見されたオオサンショウウオの中に、チュウゴクオオサンショウウオおよび種間雑種が含まれていることが判明しています。これらの交雑種は、広島県や岐阜県の河川でも確認されています。

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